ホンドギツネ

ホンドギツネ（Vulpes vulpes japonica）について

ホンドギツネは、アカギツネの日本亜種であり、本州、四国、九州に生息しています。四国では生息数が少ないとされています。かつて房総半島南部への移入が報告されましたが、これは誤りであることが判明しています。

形態

ホンドギツネは、以下の特徴を持っています。

体長: 52–76cm
尾長: 26–42cm
体重: 4–7kg
体色: 赤みがかった黄色（いわゆる「きつね色」）。腹部、頬、尾の先は白い。
尾: 毛がふさふさしており太く見える。尾の基部上面には黒い斑点と尾上腺がある。

毛皮が美しいため、服飾品に利用されることがあります。北海道に生息するキタキツネと比較すると、やや小型で、足首部分が黒くなっていない点が異なります。また、頭骨の形状や乳頭の数も、キタキツネとは異なります。

生態

ホンドギツネは、雑食性で、主にネズミや鳥類、昆虫類を捕食しますが、果実などの植物も食べます。食性は季節や生息環境によって変化します。狩りの際には、単独で決まったルートを通り、獲物を探します。生息地は、里山から高山までの森林で、森林に接する草原や農耕地にも姿を現します。人里に近い場所では、農作物を荒らしたり、家畜を襲ったり、ゴミを漁ったりすることもあります。

近年、開発やタヌキ、野犬の繁殖の影響で、生息数を急速に減らしています。

繁殖

通常は単独で生活し、縄張りを守りますが、12月から2月頃の交尾期には、互いの縄張りを侵入します。巣穴は、ニホンアナグマの古い巣を利用したり、日当たりの良い林や草原などに自ら作ります。巣穴は子育て期間のみ利用され、その他の期間は一時的な避難場所として使われる程度です。巣穴の入り口は直径25–30 cmで、複雑な構造をしています。巣穴は親子代々で引き継がれ、年々拡張され、全長30mを超えることもあります。

繁殖期は12月から2月で、妊娠期間は約52日です。巣穴の中で、体重約100g、体長約9cm、尾長約6cmの黒い子ギツネを2–7頭産みます。子ギツネは尾の先端が白いのが特徴です。母親を中心とした母系社会を形成し、前年生まれのメス（ヘルパー）が子育てを手伝います。オスも子ギツネが生後1ヶ月頃までは子育てに参加しますが、その後は家族群から離れます。子ギツネは成長と共に集団で生活し、9月頃には単独生活を始めますが、家族群の縄張りを離れることはありません。

オスは生後7-8ヶ月で親離れし、縄張りを離れて分散します。メスは生まれた年の12月から2月までに性成熟しますが、通常は1歳で繁殖は行いません。野生での寿命は3年から4年程度ですが、1歳までの生存率は4%以下です。飼育下では10年ほど生きることもあります。

系統

ミトコンドリアDNAの解析により、ホンドギツネは単系統群であることが確認されています。他亜種から分岐した時期は約14.8万年前と推定されています。また、ホンドギツネは日本列島の東西で2つのサブクレードに分かれています。一方、北海道に分布するキタキツネは、複数の起源を持つ多系統群であることが示唆されています。

参考文献

日高敏隆監修、川道武男編 『日本動物大百科1 哺乳類I』、平凡社、2002年
フィールドベスト図鑑 12 日本の哺乳類、学習研究社、2002年
米田政明 「キツネ」『日本の哺乳類【改訂2版】』阿部永監修 東海大学出版会、2008年

外部リンク

* ホンドギツネとキタキツネ - 北里大学獣医学部 生態管理学研究室

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