ニホンアナグマ

ニホンアナグマ（Meles anakuma）について

ニホンアナグマは、食肉目イタチ科アナグマ属に分類される哺乳類で、日本固有種です。日本では単に「アナグマ」と呼ばれることもあります。

形態

体長は40～60cm程度、尾長は11.6～14.1cm、体重は12～13kg程度で、個体差や地域差が見られます。体型は丸みを帯びており、ずんぐりとした印象を与えます。前後の足にはそれぞれ5本の指があり、親指は他の指から離れて生えています。爪は鋭く、地面を掘るのに適しています。歯は合計34本で、門歯、犬歯、臼歯、大臼歯で構成されています。

食性

食性は雑食で、タヌキとよく似ています。ミミズやコガネムシの幼虫などの土中にいる生き物を好んで食べ、土を掘り返して捕食します。

生態

巣穴: 自分で巣穴を掘って生活します。巣穴は複雑に地下で繋がっており、複数の出入口を持つことがあります。巣穴全体は「セット」と呼ばれ、家族で世代を超えて利用します。出入口は楕円形で、倒木や草むらに隠れるように作られます。穴を掘る際には、前足で土を押し出し、アクセストレンチと呼ばれる溝ができます。
冬眠: 11月下旬頃から4月中旬頃まで冬眠しますが、地域によっては冬眠しない個体もいます。冬眠中は睡眠が浅く、完全に眠っているわけではありません。冬眠から目覚めるのは、1日の平均気温が10℃を超える頃です。
子育て: 春から夏にかけて子育てを行い、夏には子どもを巣穴の外に出します。秋には子どもは親と同じくらいの大きさに成長し、冬眠に備えて食欲が増します。秋は親離れの時期でもあります。興味深いことに、母親はメスの娘を1頭だけ残し、翌年の子育てを手伝わせることがあります。娘は母親の子供の世話や餌の調達を行うことで、将来の育児の練習をすると考えられています。
擬死: 危険を感じると、動かずに薄目を開けたまま「狸寝入り」と呼ばれる擬死の状態になることがあります。
ため糞: ため糞をする習性がありますが、タヌキのように大規模なものではなく、小規模です。

分布

本州、四国、小豆島、九州の里山に生息しています。模式標本（最初に種の基準として用いられた標本）の産地は長崎です。

分類

以前はユーラシアアナグマの亜種とされていましたが、2002年に陰茎骨の形状の違いから独立種とする説が提唱されました。

人間との関係

日本では古くから身近な動物であり、タヌキやハクビシンとともに「ムジナ」と呼ばれてきました。狩猟対象となることもありましたが、近年は生息数の減少が懸念されています。農地開発による生息地の破壊や、アライグマとの競合などが原因と考えられています。

文化

かちかち山: 童話『かちかち山』に登場するタヌキは、アナグマがモデルであるという説があります。かつては土葬が一般的であったため、墓を掘り返す習性を持つアナグマが、物語のモチーフになったと考えられます。
同じ穴の貉: タヌキとアナグマはしばしば混同されますが、その理由の一つとして、同じ巣穴を利用することが挙げられます。アナグマが使っていない巣穴をタヌキが利用することがあります。

その他

肉の味は、エッセイ「香熊」によるとビーバーに似ているとされています。
巣材として草を使い、巣材が濡れると天日に干すという話もあります。

参考文献

熊谷さとし『タヌキを調べよう』（初版）偕成社〈身近に体験! 日本の野生動物 (2)〉、2006年2月、20-27頁。ISBN 978-4035264200。
『広辞苑』（第5版）岩波書店、1998年 - 2001年。（ シャープ電子辞書 PW-9600 収録）

関連項目

たぬき・むじな事件

外部リンク

ニホンアナグマ - ズーラシア探検隊
ニホンアナグマ - レッドデータブックやまぐち 山口県環境政策課

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