ホンモロコ

ホンモロコ（本諸子）

ホンモロコは、学名を Gnathopogon caerulescens とする淡水魚で、コイ科タモロコ属に分類されています。一般的にはモロコやゴマモロコ、ヤナギモロコと呼ばれることもあります。もともとは琵琶湖の固有種として知られていましたが、近年では山梨県の山中湖や長野県の諏訪湖、東京都の奥多摩湖などにも移植され、さまざまな地域で見ることができるようになっています。

形態

ホンモロコは通常、湖の水深5メートル以上の中層に生息しています。タモロコと比較すると、体形がより細長く、最大で約15センチメートルに成長します。また、口ヒゲが短く、喉部が角張っている特徴も持ち合わせており、体側には淡い横帯が見られます。主に動物プランクトンや水生昆虫、小型の甲殻類を捕食しているため、栄養価も非常に高い魚です。

生態と繁殖

ホンモロコの繁殖は通常3月から7月に行われ、この時期には多数の個体が湖岸や水路に現れ、メスを取り囲むオスたちの姿が見られます。産卵は湖岸に生えた柳や草の根、または小石に行われ、その水深は数センチメートルと非常に浅いです。したがって、水位の変動による影響を受けやすいのが特徴です。卵から孵化した後、ホンモロコはおおよそ半年から1年後には繁殖能力を持つようになりますが、寿命は2-3年程度で、特に産卵後に亡くなる個体も多いとされています。

滋賀県水産試験場の研究によると、流れが穏やかな場所では卵が見つからないことが多い一方で、流れが速い場所では卵が集中していることが分かっています。

水産資源としてのホンモロコ

埼玉県ではホンモロコの養殖が盛んで、年間生産量は約20トンに達し、日本一の規模となっています。また、山梨県では2007年からJAふじかわにより試験的に養殖が開始され、地域ブランド「ふじかわもろこ」として広まり、2015年度には出荷量が560キログラムに達しました。広島市佐伯区や岐阜県でも水田を利用した養殖が始まっています。

琵琶湖におけるホンモロコの漁獲量は、1994年以前には150-350トンと安定していましたが、1996年以降は漁獲量が激減し、特に2008年にはわずか10トンにまで減少しました。その結果、ホンモロコは高級食材として珍重されるようになりました。

ホンモロコの減少原因としては、産卵場所の減少や環境変化、捕食圧の増加、外来種の影響、過剰な漁獲などが挙げられています。そのため、滋賀県や周辺自治体では、産卵場の保護や外来魚の駆除、養殖や放流などを通じて水産資源の維持に努めています。

食材としての魅力

ホンモロコは日本の淡水魚の中でも特に美味とされ、多くの料亭で高値で取引されています。特に冬に獲れる「子持ちモロコ」は名物料理として有名で、多様な調理法が存在します。一般的には塩焼き、煮物、天ぷら、唐揚げ、佃煮、南蛮漬けなどで楽しむことができます。滋賀県では、子持ちモロコを味噌と酢で和えた「どろ酢」として食べることも人気です。また、愛知県海部地方や岐阜県には押し寿司の「もろこ寿司」という独特の料理も存在しています。

これらの調理法により、ホンモロコは地域の伝統料理としても親しまれています。

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