ホーミ・J・バーバー

ホーミ・ジャハーンギール・バーバー：インド原子力開発の父

ホーミ・ジャハーンギール・バーバー (1909年10月30日 - 1966年1月24日) は、インドの原子力開発に多大な貢献をした著名な物理学者です。ムンバイの裕福なパールシー（ペルシャ系インド人）の家庭に生まれ、ゾロアスター教を信仰していました。彼の親族にはインドの大財閥、タタ財閥の一族が含まれており、幼少期からタタ家と深い繋がりを持ち、同財閥から多大な支援を受けていました。

バーバーはケンブリッジ大学で機械工学を学びましたが、ポール・ディラックの影響を受け、理論物理学に転向。1935年にケンブリッジ大学で学位を取得した後、宇宙線シャワーの研究で高い評価を得ました。1939年にインドに戻り、インド理科大学院でチャンドラセカール・ラマンのもとで研究活動を行いました。

彼の才能はすぐに認められ、1941年には王立協会フェローに選出されます。1945年には、タタ財閥の会長J・R・D・タタの支援を受けて、ムンバイに基礎科学研究所（Institute of Fundamental Research）を設立、所長に就任しました。この研究所は、その後インドの科学研究の中心地として発展していくことになります。

戦後、バーバーはインド初代首相ジャワハルラール・ネルーと親交を深め、インドの核エネルギー開発計画の中心人物となりました。彼は、数多くのインド人核物理学者を育成し、インドの原子力技術の基盤を築きました。また、国際的な科学交流にも積極的に参加し、世界的な科学コミュニティとのネットワークを構築しました。彼のリーダーシップと尽力によって、インドは短期間で原子力技術において目覚ましい進歩を遂げました。

バーバーは、インドにおける科学技術の発展に計り知れない貢献をしました。彼の指導の下、インドは原子力技術において自立性を確立し、国際的な地位を築きました。その功績を称え、バーバー原子力研究所（Bhabha Atomic Research Centre, BARC）が設立されています。

しかし、彼の輝かしいキャリアは、1966年にヨーロッパへ向かう途中の航空機事故（インド航空101便墜落事故）で突然幕を閉じました。この悲劇的な事故は、インドだけでなく世界中の科学界に大きな衝撃を与えました。

バーバーの死は、インドの科学界にとって大きな損失でしたが、彼の功績はインドの科学技術発展の歴史に永遠に刻まれています。彼は、単なる科学者としてだけでなく、インドの科学技術政策を牽引した指導者であり、その影響は現代インドの科学技術界にまで及んでいます。彼の生涯は、困難な状況下でも理想を追求し、祖国発展に貢献した科学者の模範となっています。彼の業績は、これからもインドの科学技術の発展を導き続けるでしょう。

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