ホーンブロワーシリーズ

ホーンブロワーシリーズ

『ホーンブロワーシリーズ』は、セシル・スコット・フォレスターによる、ホレイショ・ホーンブロワーを主人公とした海洋冒険小説の総称です。

概要

物語は18世紀末から19世紀前半を舞台に展開されます。主人公ホレイショ・ホーンブロワーは、1794年1月に17歳で英国海軍に士官候補生として入隊。平民出身というハンディキャップを背負いながらも、その卓越した才能と不屈の精神で数々の困難を乗り越え、最終的にはバス勲爵士、海軍元帥、そして男爵にまで上り詰めます。

このシリーズの魅力は、単なる軍事・冒険小説として優れているだけでなく、ホーンブロワーという一人の人間を深く掘り下げている点にあります。上官としての苦悩、部下への責任、そして自身が抱える様々な劣等感など、英雄としてだけでなく、人間味あふれるホーンブロワーの姿が綿密に描かれています。この人間描写こそが、本作を他の海洋冒険小説とは一線を画すものとしています。

その影響力は計り知れず、後の海洋冒険小説に多大な影響を与え、「第2のホーンブロワー」や「未来のホーンブロワー」といった言葉が、ホーンブロワー以降の小説を形容する際に用いられるほどです。また、他の海洋冒険小説シリーズにおいて、重要な登場人物として、あるいはワンシーンのみの登場人物として、ホーンブロワーが登場する例も確認されています。

日本では、ハヤカワ文庫から「海の男／ホーンブロワーシリーズ」として出版されています。1951年には『艦長ホレーショ』として映画化、1998年からはイギリスで長編TVドラマ『ホーンブロワー 海の勇者』シリーズが制作されました。

作品一覧

ハヤカワ文庫の日本語版は物語の時系列順に刊行。絶筆となった『ナポレオンの密書』を除く全10巻が刊行されました。TVドラマシリーズの好評を受け2003年に重版。2004年には10巻全てが改版され「新装版」に切り替わりました。新装版では、字が大きく鮮明になり、訳語が統一され、用語集・艦船図解・新しいあとがき等が加えられるなどの改善がなされています。

フォレスターの死により未完に終わった長編『ナポレオンの密書』は、1984年に光人社より刊行されましたが、長く絶版でした。2007年にハヤカワ文庫のホーンブロワーシリーズ別巻として再刊されています。

関連書

『ホーンブロワーの誕生』ハヤカワ文庫、1978年
Hornblower Companion,1964
『ホレーショ・ホーンブロワーの生涯とその時代』至誠堂新書、1974年
『南溟の砲煙』光人社 1983
『南溟に吼える』光人社 1986

主な登場人物

ホレイショ・ホーンブロワー: 主人公。
ウィリアム・ブッシュ: ホーンブロワーの親友であり、右腕。後に勅任艦長に昇任。
ブラウン: ホーンブロワーに忠誠を誓う水兵。後にホーンブロワー男爵家の執事となる。
ロバート・キーン: ホーンブロワーを士官候補生として受け入れた艦長。
エドワード・ペルー: ホーンブロワーの理解者。後に提督に昇任。
ジェームズ・ソーヤ: レナウン号艦長。
ウィリアム・コーンウォリス: ホーンブロワーの理解者。ホーンブロワーを勅任艦長に昇進させた。
マリア: ホーンブロワーの最初の妻。
レディ・バーバラ・ウェルズリー: ホーンブロワーの再婚相手。
ホレイショ・ネルソン: 実在の人物。ホーンブロワーシリーズには直接登場しない。
グラセー伯爵ルシアン・アントワーヌ・ド・ラドン: フランス貴族。ホーンブロワーを助ける。
マリー: グラセー子爵夫人。ホーンブロワーと愛し合う。
ナポレオン・ボナパルト: ホーンブロワーシリーズにおける敵。
ルイ＝ナポレオン: 後のナポレオン3世。ホーンブロワーにレジオンドヌール勲章を授与。

本作を題材とした作品

映画: 艦長ホレーショ (1951年)
TVドラマ: ホーンブロワー 海の勇者 (1998年〜2003年)

影響を受けた作品

テレビドラマシリーズ『スタートレック』
デイヴィッド・ファインタック『銀河の荒鷲シーフォート』シリーズ
デヴィッド・ウェーバー『オナー・ハリントン・シリーズ』シリーズ

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