ウィリアム・コーンウォリス

サー・ウィリアム・コーンウォリス：不屈の精神で海を制したイギリス海軍の英雄

サー・ウィリアム・コーンウォリス（1744年2月10日 - 1819年7月5日）は、18世紀後半から19世紀初頭にかけての激動の時代に、イギリス海軍で輝かしい功績を残した軍人です。兄はインド総督を務めた初代コーンウォリス侯爵チャールズ・コーンウォリスであり、名門の家柄に生まれました。

軍人としての初期

1755年に海軍に入隊したコーンウォリスは、その才能を быстро発揮し、急速に昇進を重ねます。1766年には勅任艦長となり、その後は様々な艦を指揮して船団護衛などの任務に携わりました。1779年には、ジョン・バイロン提督の指揮下で戦列艦ライオンの艦長を務めますが、グレナダ島の海戦でライオンは甚大な損害を受け、単独でジャマイカへ帰還を余儀なくされました。しかし、コーンウォリスの不屈の精神はここで終わらず、1780年3月にはモンテ・クリスティ沖で僚艦2隻と共に優勢なフランス艦隊と交戦し、6月にはバミューダ付近で再び敵艦隊と遭遇するなど、数々の海戦で勇敢に戦いました。

アメリカ独立戦争での活躍

ジブラルタル包囲戦に参加後、コーンウォリスは北アメリカへ戻り、サミュエル・フッド提督の指揮下でセント・キッツの海戦に、ジョージ・ロドニー提督の下でセインツの海戦に参加しました。特にセインツの海戦については、彼のロドニーの作戦指揮に対する批判的な意見が記録に残されています。

東インドでの任務

1788年、コーンウォリスは代将として東インドに赴任し、1794年までインドで勤務しました。この間、ティープー・スルタンとの戦争においてポンディシェリ征服を支援するなど、重要な役割を果たしました。彼は1793年2月1日に少将に、1794年7月4日には中将に昇任しています。

フランス革命戦争と「コーンウォリスの退却」

フランス革命戦争において、コーンウォリスは海峡艦隊に所属し、数々の重要な作戦に参加しました。中でも最も有名なのは、1795年6月16日に起きた「コーンウォリスの退却」と呼ばれる出来事です。ブレスト沖を航行中、彼の4隻の戦列艦と2隻のフリゲートは、12隻の戦列艦と多数の大型フリゲートからなるフランス艦隊に遭遇しました。圧倒的な戦力差にも関わらず、コーンウォリスは撤退を決意しますが、艦隊のうち2隻が鈍足であったため、取り残される危機に瀕します。最後尾のマーズが深刻な損傷を受け、フランス艦に包囲されそうになった時、コーンウォリスは大胆にも回頭し、マーズの救出に向かいました。この予想外の行動に、フランス艦隊は近くにイギリス海峡艦隊の本隊がいるのではないかと疑い、追跡を中止して退却しました。この出来事は、イギリス海軍の士気の高さを示す象徴的なエピソードとして語り継がれています。

人物像と晩年

「コーンウォリスの退却」での英雄的な行動によって、コーンウォリスの名声は高まり、その人間性は水兵や士官たちから深く愛されるようになりました。1796年には、西インドへの配属命令を健康上の理由で拒否したため、命令不服従で軍法会議にかけられますが無罪となります。1799年に大将に昇進し、ナポレオン戦争中には2度海峡艦隊の司令長官を務めました。その後は第一線から退き、1815年にバス勲章を授与され、1819年にその生涯を閉じました。

彼は「ビリー・ゴー・タイト」、「ビリー・ブルー」、「コーチー」、「ミスター・ウィップ」など、様々なニックネームで親しまれていました。これらの愛称は、彼が将兵から単に畏敬されるだけでなく、心から愛されていたことの証と言えるでしょう。サー・ウィリアム・コーンウォリスは、その勇敢さと優れた指揮能力、そして何よりも部下を大切にする人間性によって、イギリス海軍史に名を残す偉大な軍人として、今もなお語り継がれています。

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