ボクサー装輪装甲車

ボクサー装輪装甲車

ボクサー装輪装甲車（Boxer wheeled armored vehicle）は、ドイツとオランダが共同開発した多用途の装輪装甲車です。別名「GTK」（Gepanzertes Transport Kraftfahrzeug：装甲輸送車両）とも呼ばれ、過去には「MRAV」（Multirole Armoured Vehicle）という名称も使用されていました。この車両の最大の特長は、後部に装備された「ミッション・モジュール」を交換することで、多様な任務に迅速に対応できる点です。

制造と管理

ボクサー装輪装甲車は、ARTEC（ARmoured vehicle TEChnology）GmbHという工業グループによって製造され、欧州共同兵器調達機構OCCAR（Organisation conjointe de coopération en matière d'armement）がその計画を管理しています。ARTEC GmbHの本社はミュンヘンにあり、ドイツ側の親会社はクラウス＝マッファイ社とラインメタル社、オランダ側の親会社はストークPWV社（現在はラインメタル社の子会社）です。

開発の背景

1990年代後半、ドイツ、イギリス、フランスはそれぞれの陸軍の装甲車両を更新する必要が生じ、共同開発に向けて動き出しました。1998年に3つの国でARTEC社が設立され、GTK（MRAV）プロジェクトがスタートしました。しかし、フランスは1999年にプロジェクトから離脱し、その後ドイツとイギリスは新たな共同事業体OCCARを設立し、計画を継続しました。

これに伴い、両国向けに指揮車型と兵員輸送型の試作車両が製作され、最終的に約600台の量産が決定されました。オランダは2001年に計画に参加し、これによってGTK/MRAV/PWVと改称されました。オランダ陸軍はM577とYPR-765を代替するためにボクサーの導入を決定し、最初の試作車両は2002年に公開されました。

設計と性能

ボクサー装輪装甲車は、33トンと比較的大きな戦闘重量を持ち、他の同用途の車両よりも高い防御力を誇ります。各種ミッション・モジュールの交換により、装甲兵員輸送、移動指揮所、救急搬送など、多様な任務に対応可能です。また、モジュールは1時間以内で交換できるため、高い柔軟性を持っています。

この車両の車体は硬質鋼とモジュラー装甲から構成されており、追加装甲が簡単に取り付けられる設計です。防護性能は非常に高く、トップアタック弾や地雷からも乗員を保護するよう設計されています。また、同車両には熱、レーダー、音響に対する高度なステルス技術も組み込まれています。

運転においては、8気筒のディーゼルエンジンとトルクコンバータ付き自動変速機が搭載され、全輪駆動のマルチリンク懸架システムを備えています。ランフラットタイヤを装備し、泥濘や雪道でも優れた機動性を発揮し、最大103km/hの速度で走行可能です。

ミッション・モジュール

ボクサーには以下のようなさまざまなミッション・モジュールがあります。

• - 装甲兵員輸送モジュール
• - 移動司令部モジュール
• - 救急搬送モジュール
• - 医療モジュール
• - 戦闘被害修理モジュール
• - NEMO迫撃砲モジュール
• - 155mm榴弾砲モジュール

それぞれのモジュールは特定の任務に特化しており、ボクサーの柔軟性を高めています。

採用国

ボクサーはドイツとオランダのほかにも、リトアニアやオーストラリアで採用されています。例えば、オランダ陸軍は200両を保有し、ドイツ陸軍は272両を受領しています。リトアニアはM113の後継としてボクサーを導入しており、オーストラリアは偵察戦闘車としてボクサーCRVを採用する計画です。これらの国々での採用により、ボクサーは多くの現場でその性能を発揮しています。

このように、ボクサー装輪装甲車はそのモジュラー設計、高い防護性能、機動性により、現代の多様な戦闘環境において重要な役割を果たしています。

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