ボストン・パブリック・ガーデン

ボストン・パブリック・ガーデンは、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン市の中心部に位置する、歴史と芸術に彩られた緑豊かな公園です。東に隣接するボストンコモンが比較的自然に近い空間であるのに対し、パブリック・ガーデンは国内初の公立植物園として、より計画的にデザインされた庭園としての性格を持ちます。四季折々の多彩な植物、優美な池、そして数多くの歴史的な彫像や噴水が織りなす景観は、市民だけでなく国内外からの訪問者を魅了する、ボストンの象徴的なスポットの一つとなっています。

歴史

公園の歴史は1837年に始まります。慈善家ホレス・グレイが、この地を公共の植物園として整備することを市に請願したのがきっかけです。市の土地売却計画に反対する市民運動とグレイの働きかけが実り、1856年に公園としての存続が正式に決定しました。1859年からは本格的な改修工事が進められ、池の完成や周囲のフェンス設置が行われました。元は塩沼だった約9.7ヘクタールの敷地全体の設計はジョージ・ミーチャムが担当し、園路や花壇の配置は市の担当者が細部を詰めました。この設計には、後に設置される噴水や像のための計画も含まれていました。

公園の歴史には、困難な時代の克服も含まれます。特にチャールズ・ストリート側は低地で湿気が多く、かつてはゴミ捨て場として利用されることもありました。この部分の勾配を改善する計画は長年ありましたが、土砂運搬の費用が課題でした。しかし、1895年の地下鉄トンネル工事で出た土砂を活用することで、この問題は解決され、景観が大きく改善されました。その歴史的・文化的な価値から、パブリック・ガーデンは1977年にボストン・ランドマーク、1987年にはアメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されています。

特色と景観

パブリック・ガーデンの中心にある約1.6ヘクタールの池は、公園の最も大きな魅力の一つです。春から秋にかけては、池にカモや白鳥が集まります。特に有名なのが、1877年から続く伝統のアトラクション、スワンボートです。白鳥の形をしたボートに乗り、ガイドに案内されながら池を巡る体験は、ボストン観光のハイライトの一つです。池の中にある島は、かつては半島でしたが、安全確保のために切り離されました。

公園はチャールズ通り、アーリントン通り、ボイルストン通り、ビーコン通りの4本の通りに囲まれた長方形をしています。チャールズ通りはボストンコモンとの境であり、ビーコン通りの北には歴史的なビーコンヒルの街並みが広がります。西側のアーリントン通りを越えると、景観設計家フレデリック・ロー・オルムステッドが手掛けた、都市の緑地帯「エメラルド・ネックレス」へと続いていきます。

植物と芸術作品

公立植物園として、公園には多様な植生を誇ります。園内には様々な種類のバラ、球根類、低木などが植えられ、特に中央の遊歩道沿いに設けられた花壇には、市が管理する温室で栽培された色とりどりの花々が美しく咲き誇り、訪れるたびに異なる景色を楽しむことができます。池の周りにはシダレヤナギが風に揺れ、園路沿いにはトチノキ、メタセコイア、イチョウなど、国内外の様々な種類の樹木が植えられています。

園内には、歴史上の人物や神話、児童文学などに題材を得た数多くの彫像や噴水が点在しており、野外美術館のような雰囲気も持ち合わせています。アーリントン通り入口のジョージ・ワシントン騎馬像をはじめ、エーテル麻酔を記念した「グッド・サマリタン」、優雅な女性像の「エンジェル・オブ・ザ・ウォーターズ」、そして児童文学『カモさんおとおり』でおなじみのカモの家族像などがあります。これらの像は、庭園の歴史や文化的な深みを物語っています。池に架かる橋は、かつて世界最短の吊り橋として知られましたが、現在は装飾を残した桁橋となっています。また、2001年9月11日の同時多発テロ事件の犠牲者を追悼する記念碑も設置されています。

管理と文化的影響

ボストン・パブリック・ガーデンの管理・保全は、ボストン市当局と、公園の保全活動を行う非営利団体「フレンズ・オブ・ザ・パブリック・ガーデン」が連携して行っています。これらの組織は、寄付やボランティアの協力を得ながら、庭園の美しさと機能を保つための活動を行っています。

この庭園は、長年にわたり多くの芸術家や作家にインスピレーションを与え続けてきました。E・B・ホワイトの『白鳥のトランペット』、ロバート・ローウェルの詩、ロバート・マックロスキーの『カモさんおとおり』など、多くの文学作品に登場します。映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち|グッド・ウィル・ハンティング_旅立ち』の有名なシーンもここで撮影されており、劇中でロビン・ウィリアムズが座ったベンチは、彼の死後、多くのファンが訪れる場所となっています。

交通アクセスも良好で、MBTAの地下鉄グリーンラインやレッドラインの駅から徒歩圏内です。チャールズ通りの地下には公営駐車場もあります。

ボストン・パブリック・ガーデンは、その美しい景観、豊かな歴史、そして文化的なつながりによって、ボストンの都市空間において特別な位置を占めています。

もう一度検索