ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争（1992-1995）は、新たに独立を果たしたボスニア・ヘルツェゴビナで発生した内戦であり、多民族国家における民族間対立が顕在化した悲劇的な事例です。この内戦は、旧ユーゴスラビアからの独立を求めるボシュニャク人とクロアチア人と、それに反発するセルビア人との間で激しい衝突を引き起こしました。

背景

1991年、ユーゴスラビアでの紛争が勃発し、各共和国が独立を宣言していく中で、ボスニア・ヘルツェゴビナも1992年に独立を宣言しました。当時、ボスニア・ヘルツェゴビナには430万人の住民が住んでおり、その民族構成はボシュニャク人が44%、セルビア人が33%、クロアチア人が17%を占めていました。ボシュニャク人とクロアチア人が独立を望む一方で、セルビア人はこれに反対しており、その結果、双方の間に亀裂が生まれました。独立宣言から1ヶ月後、軍事衝突が発生し、数年間にわたる戦闘が始まりました。

戦闘の展開

紛争の初期段階では、ユーゴ政府の支援を受けたセルビア人勢力が優勢でした。ボシュニャク人とクロアチア人は武器や数の面で劣っており、さらに内部的な連携が不十分でした。1992年中には、ボスニア・ヘルツェゴビナ全土の6割をセルビア人勢力が制圧し、サラエヴォの包囲も行われました。国際社会は制裁を試みましたが、状況は好転しませんでした。

その後、アメリカの介入により、ボシュニャク人勢力とクロアチア人勢力が連携を強化し、セルビア人勢力に対する包囲網を構築しました。NATOによる空爆や軍事援助も行われ、戦局に多少の変化が見られました。特に1995年夏には、サラエヴォに対するセルビア人勢力の攻撃が激化しましたが、NATOの支援を受けたボシュニャク人勢力は反攻に転じました。

スレブレニツァの虐殺

1995年には、ボシュニャク人地区であるスレブレニツァが無情にもセルビア人勢力に侵攻され、8,000人以上が組織的に殺害されるスレブレニツァの虐殺が発生しました。この事件は国際法廷によってジェノサイドとして認定され、戦争の残酷さを象徴しています。

和平合意

紛争の終結は、1995年にアメリカの仲介により実現した和平合意によってもたらされました。デイトン合意により、ボスニア・ヘルツェゴビナはボシュニャク人・クロアチア人連邦とセルビア人が主体のスルプスカ共和国に分割され、一つの国家としての形が保持されました。これにより、様々な民族が共存する新たな体制が確立されるとともに、戦争の長期化に苦しんだ人々にとって希望の光となることが期待されました。とはいえ、内戦がもたらした傷は深く、国内には未解決の問題が残っています。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争は、民族間対立がもたらした悲劇の象徴であり、今後の多民族国家における共存のあり方を考える上でも重要な歴史的事件として位置づけられています。

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