デイトン合意

デイトン合意：ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争終結への道

ボスニア・ヘルツェゴビナ和平一般枠組み合意、通称デイトン合意は、1995年12月14日にパリで署名され、3年半に及んだボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に終止符を打った歴史的な和平合意です。この合意は、紛争当事者間の複雑な交渉を経て成立し、現在のボスニア・ヘルツェゴビナの国家体制の基礎となっています。

合意成立の背景

紛争激化の中、和平に向けた努力は難航していました。しかし、1995年8月、NATOによるボスニア・セルビア人勢力への空爆と、クロアチア軍とボスニア軍による攻勢が開始されると、新たな協議の必要性が高まりました。また、スレブレニツァでの虐殺事件や、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷による起訴も、和平交渉に影響を与えました。

同年9月から10月にかけて、アメリカとロシアを中心とする国際連絡調整グループがデイトンに集まり、紛争当事国に和平協議への参加を強く働きかけました。

デイトン協議

1995年11月1日から21日まで、オハイオ州デイトンのライト・パターソン空軍基地で和平協議が行われました。この場所が選ばれたのは、参加国がメディアを通じて駆け引きすることを避けるためでした。協議には、セルビア大統領ミロシェヴィッチ、クロアチア大統領トゥジマン、ボスニア・ヘルツェゴビナ大統領イゼトベゴヴィッチらが参加しました。

協議はアメリカ国務長官クリストファーが主導し、国務次官補ホルブルックらが交渉にあたりました。EU上級代表ビルトとロシア外務第一次官イワノフが共同議長を務め、NATOのクラークやイギリス軍のリーキーなども重要な役割を果たしました。

合意の内容と意義

1995年11月21日にデイトンで合意が成立し、同年12月14日にパリで正式な合意文書が署名されました。この合意には、紛争当事国の首脳に加え、フランス大統領シラク、アメリカ大統領クリントン、イギリス首相メージャー、ドイツ首相コール、ロシア首相チェルノムイルジンが立ち会いました。

デイトン合意の第4付属書には、現在のボスニア・ヘルツェゴビナの構成区分や政体が規定された憲法が記載されています。この憲法では、スルプスカ共和国とボスニア・ヘルツェゴビナ連邦という二つの構成体の境界線が定められ、そのための実務作業が詳細に記されています。

合意文書では、さまざまな国際機関が合意内容の監視、監督、履行を求められています。NATO主導の和平履行部隊（IFOR）が軍事行動を行い、国連保護軍（UNPROFOR）に代わって1995年12月20日に配備されました。

デイトン合意のその後

デイトン合意は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を終結させるという大きな成果を上げましたが、同時に多くの課題も残しました。民族間の対立や政治的な不安定さ、経済の低迷など、紛争の傷跡は深く、克服すべき課題は山積しています。

しかし、デイトン合意は、ボスニア・ヘルツェゴビナが平和な国家として再建するための基礎となるものであり、その意義は今日においても色褪せることはありません。

近年、ボスニア・ヘルツェゴビナの平和構築再考として、デイトン和平合意から得られる教訓を活かし、より安定した未来を築くための議論が活発に行われています。

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