ボスニア軌間

ボスニア軌間とは

ボスニア軌間は、軌間が760mm（2フィート5+15⁄16インチ）の狭軌鉄道の一種です。主に旧ユーゴスラビア地域、特にボスニア・ヘルツェゴビナに多く存在し、そのほとんどがオーストリア＝ハンガリー帝国時代に建設されました。地元では、この狭軌鉄道は親しみを込めて「Ćiro（チロ）」と呼ばれていました。建設は19世紀末から20世紀初頭にかけて行われ、この760mm軌間は「ボスナスプル」とも呼ばれ、後にオーストリア＝ハンガリー帝国全体に広がりました。

歴史

この大規模な鉄道網の起源は、ブロドからゼニツァを結ぶボスナ鉄道という軍用鉄道（Heeresfeldbahn）に遡ります。この鉄道は、ヒューゲル＆サガー社によって建設され、ティミショアラからオルショヴァまでの路線建設で使用された資材が再利用されました。オーストリアでは760mm軌間は「ファラノン線路（Pharanonenspur）」と呼ばれていました。これは、スエズ運河の建設に関わったアロイス・ネグレッリが、ファラオ時代の狭い通路を参考に運河建設のために線路を敷設したことに由来するとされていますが、確証はありません。

ボスナ鉄道は、サラエボまで延伸され、この地域初の近代的な交通手段となりました。その後、民間輸送のニーズに応えるべく迅速に拡張されました。この地域における主要ルートには、ボスニア東部鉄道や、サラエボからモスタルを経由してアドリア海沿岸までを結ぶナレンタ鉄道があり、ナレンタ鉄道にはいくつかのラックレール区間が含まれていました。

その後、オーストリア＝ハンガリー帝国全域で狭軌鉄道の建設に760mm軌間が採用されるようになり、マリアツェル線、ピンツガウ地方線、ザルツカンマーグート地方鉄道、ツィラータール鉄道、イプス谷線などが建設されました。オーストリア初の狭軌鉄道は、1889年に開業したシュタイヤータール鉄道でした。また、バルカン半島におけるオーストリア＝ハンガリー帝国の影響力は、ブルガリアやセルビアなど近隣諸国でのボスニア軌間による鉄道建設を促しました。

第一次世界大戦後、ユーゴスラビアが建国されると、ボスニアとセルビアを結ぶルートがシャルガン山脈を越える新しいルートで接続されました。これにより、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビアの大部分、モンテネグロ、ダルマチア沿岸の一部を含む狭軌鉄道網が形成されました。急行列車は、ベオグラードからサラエボを経由してドゥブロヴニクまで狭軌の路線を運行しました。この鉄道網には、多数の非公有森林鉄道や産業鉄道も加わりました。

第二次世界大戦後、これらの狭軌鉄道は徐々に標準軌（1435mm軌間）に置き換えられるか、廃止されました。最後に残った旅客路線であるサラエボからヴィシェグラードまでのボスニア東部鉄道は、1978年5月28日まで運行されました。セルビアの一部の路線は、貨物輸送のために数年間存続しました。ボスニアでは、バノビッチ石炭鉄道という短距離の産業鉄道のみが保存されました。セルビアのシャルガン山脈区間は、1999年から2003年の間に保存鉄道として復元されました。モクラ・ゴラからŠargan Vitasiを結ぶ列車「シャルガンスカオスミツァ（Šargan Eight）」は、西セルビアの大規模な観光プロジェクトの一部となり、2010年秋にはボスニアのヴィシェグラードまで延伸されました。

現在の状況

現在、ボスニア軌間の鉄道は、特にオーストリア、ハンガリー、チェコ共和国、ブルガリアで定期運行されています。スロバキアにも数キロの区間が存在します。ルーマニアでは、ヴァサータールバーンが50kmを超える森林鉄道として運営されています。スロベニア、クロアチア、セルビアでは、博物館鉄道や産業施設の短い区間を除き、この軌間の鉄道はほとんどが廃止されています。イタリアでは、すべての760mm軌間の鉄道は1960年代までに完全に廃止されました。ポーランドとウクライナの路線（ボルシャバタールバーン）は廃止されるか、750mm軌間に改軌されました。オーストリアでは、地方運営会社が管理していなかった路線は2000年代に連邦に引き渡され、現在では最新の時刻表付き列車として運行されています。ツィラータール鉄道は2022年までに水素燃料での運行に切り替えられ、ムア谷線は2020年代に電気駆動方式に転換される予定です。

参考文献

Helga Berdan: Die Machtpolitik Österreich-Ungarns und der Eisenbahnbau in Bosnien Herzegowina.
Tadej Braté: Die Dampflokomotiven Jugoslawiens.
Keith Chester: The Narrow Gauge Railways of Bosnia-Hercegovina.
Keith Chester: Bosnia-Hercegovina. Narrow Gauge Album.
Alfred Horn: Die Bahnen in Bosnien und der Herzegowina.
Johann Rihosek|J. Rihosek, K. Schäffer: Lokomotiven der Bahnen in Bosnien und der Herzegowina.
Arthur Meyer, Josef Pospichal: Zahnradbahnlokomotiven aus Floridsdorf.
Werner Schiendl: Die Eisenbahnen in Bosnien und der Herzegowina 1867–1918.

映像

Schmalspurdampf in Bosniens Gebirge

外部リンク

ユーゴスラビアの760mm軌間の鉄道の写真 (英語)

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