ボスホート

ボスホート宇宙船：ソ連の有人宇宙船

ボスホート（ロシア語: Восхо́д、英語: Voskhod）は、ソビエト連邦が開発した有人宇宙船で、ロシア語で「日の出」を意味します。ボストーク宇宙船の後継として、複数人での宇宙飛行を可能にするために設計されました。

開発の背景と特徴

ボスホート宇宙船は、ボストーク宇宙船をベースに改造されました。主な変更点として、以下の点が挙げられます。

乗員数の増加: 2人または3人乗りへと変更されました。座席数を増やすため、宇宙飛行士の射出装置は取り外されました。
帰還方法の変更: ボストークでは宇宙飛行士がパラシュートで個別に降下していましたが、ボスホートでは宇宙船ごとパラシュートで降下する方式に変更されました。着陸直前には逆噴射ロケットによる減速も行われました。
宇宙服の状況: 1号ではスペース不足のため宇宙服なしで飛行しましたが、2号では宇宙服を着用することができました。2号には船外活動用のエアロックも搭載されました。

ボスホートは、アメリカのジェミニ計画に対抗して開発が急がれたため、打ち上げ時や帰還時の緊急脱出システムがなく、非常にリスクの高い宇宙船でした。

飛行記録

ボスホート宇宙船は、無人テスト機のコスモス衛星3機と有人機2機のみが打ち上げられました。

ボスホート1号

1964年10月12日に打ち上げられ、ウラジーミル・コマロフ、コンスタンチン・フェオクチストフ、ボリス・イェゴロフの3名が搭乗しました。目的は宇宙での生化学実験や複数クルーの役割分担の試験でしたが、実際には船内が狭く、ほとんど身動きが取れなかったと言われています。また、プロパガンダ目的でパリ・コミューンの旗が持ち込まれました。

ボスホート2号

1965年3月18日に打ち上げられ、パーヴェル・ベリャーエフとアレクセイ・レオーノフが搭乗しました。アレクセイ・レオーノフは、世界初の船外活動に成功しました。しかし、宇宙服が膨張して身動きが取れなくなるなど、困難な状況に直面しました。帰還時には姿勢制御装置が故障するなど、多くのトラブルが発生しましたが、乗組員の冷静な対処により危機を乗り越えました。

計画中止とその後

当初はソユーズ宇宙船と並行してボスホートの打ち上げも継続する予定でしたが、2号でのトラブル発生、ソユーズ1号の死亡事故、そしてソユーズ計画へのリソース集中が必要となったため、計画は中止されました。

計画されていたものの実現しなかったミッションには、以下のようなものがありました。

ボスホート3号: 19日間の長期滞在ミッション
ボスホート4号: 20日間の長期滞在ミッション
ボスホート5号: 女性宇宙飛行士2名による10日間のミッション。女性初の船外活動が計画されていました。
ボスホート6号: ジェットベルトを使用した宇宙遊泳

まとめ

ボスホート宇宙船は、ソ連の宇宙開発において重要な役割を果たしました。複数人での宇宙飛行を実現し、世界初の宇宙遊泳を成功させましたが、その一方で多くのリスクも抱えていました。短期間でソユーズに一本化されたものの、その開発経験は後の宇宙開発に大きな影響を与えました。

脚注

ボスホート宇宙船をよく知るためのアラカルト - ウェイバックマシン（2004年3月20日アーカイブ分）
サーカス・サーカス（ロシア宇宙開発史2）

関連項目

ソビエト連邦の宇宙開発
ボストーク
ソユーズ
* ジェミニ計画

もう一度検索