コスモス衛星

コスモス衛星（Космос）

「コスモス（Космос）」は、ソビエト連邦およびその後を引き継いだロシア連邦によって運用されている、一連の人工衛星シリーズに付けられた名称です。

最初のコスモス衛星は1962年3月16日に打ち上げられた「コスモス1号」でした。以降、2015年3月末の時点で確認されているだけでも2500機を超える膨大な数の衛星がこの名前を冠して軌道に投入されています。しかし、「コスモス」という名称は特定の種類の衛星や計画のみを指すわけではなく、その用途や目的は非常に多様です。科学技術の実証、地球観測、通信、航行支援、気象観測、そして軍事偵察や兵器開発に関連するものまで、広範なミッションを担う衛星が含まれています。また、特定の計画名を持たない試験的な衛星や、残念ながらミッションに失敗した衛星にも「コスモス」の名前が与えられるケースが多く見られるため、この命名自体が個別の衛星の性質や成功を示すものではありません。

多様なミッションの中でも、特に注目すべき例がいくつか存在します。

初期の試験衛星: ボスホート計画の無人テスト機（例：コスモス47号）や、ソユーズ計画の初期試験衛星（例：コスモス133号、コスモス140号）などもコスモス衛星として打ち上げられました。特にコスモス186号と188号は、史上初の自動ドッキングを成功させた重要なミッションでした。
深宇宙探査機の失敗: 月探査機（例：コスモス60号、111号、300号、305号）や金星探査機（例：コスモス96号、482号）、火星探査機（例：コスモス419号）など、本来は特定の計画名が付くはずだった探査機が、打ち上げに失敗した際にコスモスの名称で登録された事例があります。コスモス482号は地球帰還軌道に入った後、ニュージーランドに墜落したことで知られています。
生物実験衛星: ソ連初の生物実験衛星であるコスモス110号や、米国も参加した国際共同ミッションとなったビオンシリーズの最初の衛星であるコスモス605号、コスモス782号なども含まれます。
宇宙ステーション関連: 宇宙ステーション「サリュート」への補給船や試験機として開発されたTKS宇宙船も、その一部がコスモス衛星として打ち上げられています（例：コスモス929号、1267号、1443号、1686号）。
原子力衛星（RORSAT）: 海上監視を目的としたRORSATシリーズの中には、電源として小型原子炉を搭載したものが存在しました。これらの衛星の一部が軌道制御に失敗し、地球に落下するという重大な事故を引き起こしています。特に、コスモス954号はカナダ北部に墜落して放射能汚染を引き起こし、コスモス1402号は南太平洋に落下しました。
軍事・対衛星兵器関連: コスモス衛星の中には、軍事通信衛星（例：コスモス2251号）のような通常の軍事衛星だけでなく、人工衛星を標的とする兵器（ASAT）の試験に関連するものが含まれています。コスモス2251号は、2009年に運用を終えていたアメリカの衛星イリジウム33号と宇宙空間で衝突し、史上初の人工衛星同士の衝突事故として大量のスペースデブリを発生させました。また、コスモス1408号は2021年11月15日にロシアが実施したASAT実験の標的となり、破壊されて大規模なデブリ雲を生成しました。コスモス2504号やコスモス2553号のように、その目的がASATやさらに高度な対衛星兵器開発に関連する可能性が指摘されている衛星も存在します。

このように、コスモス衛星という名称は、ソ連・ロシアの宇宙開発の多面性と、その中で打ち上げられた膨大な数の衛星、そして時には秘匿性の高いミッションや予期せぬ事故を含む、極めて広範な活動を包括するシンボルとなっています。その匿名性の高さは、ソ連・ロシアの宇宙プログラムの多様性と複雑さを反映していると言えるでしょう。

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