ボズ・スキャッグス&デュアン・オールマン
ボズ・スキャッグスが1969年に世に送り出した『ボズ・スキャッグス&デュアン・オールマン』（原題は単に『Boz Scaggs』）は、彼のソロキャリアにおいて通算2作目となるスタジオレコーディング作品です。シンガーソングライターとしての地位を確立していく上で、極めて重要な位置を占めるアルバムと言えるでしょう。
スキャッグスは、それまで活動を共にしてきたスティーヴ・ミラー・バンドを離れた後、『ローリング・ストーン』誌の創刊者として知られるヤン・ウェナーの尽力により、アトランティック・レコードとの契約締結に至ります。しかし、このアトランティックとの契約は本作のみで終了し、彼は1971年にはコロムビア・レコードへと新たな活動の場を移すことになります。
本作のレコーディングは、アメリカ南部アラバマ州にあるマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオで行われました。この地で活動する腕利きのセッションミュージシャン集団、通称マッスル・ショールズ・リズム・セクションが全面参加。さらに、当時まだ名を馳せる直前であったギタリスト、デュアン・オールマンも迎えられ、彼のスライドギターやドブロ・ギターがアルバムサウンドに深みを与えています。この、南部独自の土臭さと洗練されたソウルが融合したサウンドは、本作最大の魅力の一つとなっています。
収録曲の中で特にエピソードとして語られるのが、ブルースの古典ともいえる「ローン・ミー・ア・ダイム」です。この楽曲は、オリジナルLPのクレジットにおいてボズ・スキャッグスのオリジナル作品として誤って記載されていましたが、実際にはブルースマン、フェントン・ロビンソンの楽曲のカヴァーでした。この誤記は後にロビンソンからの訴訟問題に発展し、最終的にクレジットが訂正されることとなりました。
アルバムは発表当時のアメリカにおいては、即座に大きな商業的成功を収めることはありませんでした。しかし、リリースから時間が経過するにつれて徐々に評価が高まり、1974年7月13日付のBillboard 200で初めてチャートインを果たします。その後も順位を上げ、1976年7月24日には最高位となる171位を記録するなど、ロングセラーとして認知されていきました。
音楽評論家からも高く評価されています。オールミュージックのスティーヴン・トマス・アールワインはこの作品に5点満点中4.5点をつけ、「ソウルやR&Bを基盤にしながら、カントリーやブルースの要素も巧みに取り入れている」と分析し、特に「ブルー・アイド・ソウルの不朽の名盤」として絶賛しました。また、著名な音楽評論家ロバート・クリストガウも本作にBプラス評価を与え、「アメリカ音楽に対する良質なオマージュ」と評しています。
さらに、音楽史における重要性を示す出来事として、『ローリング・ストーン』誌が選出した「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」の2012年の改訂版において、496位にランクインを果たしました。
本作は幾度か再発されていますが、特に大きな影響を与えたのが、1977年10月にトム・ペリーによって施されたリミックスです。この1977年版は、その後のCD再発の多くで採用されることとなりました。音楽評論家の宇田和弘氏は、このリミックスによってデュアン・オールマンのギターがより前面に出された一方で、オリジナルのマッスル・ショールズ録音らしい骨太で野性的なサウンドイメージが後退してしまったと指摘しています。
ただし、全ての再発盤が1977年版に準じているわけではありません。例えば、2015年にエドセル・レコードから発売された再発CD（EDSK 7093）は、オリジナルのミックスバージョンと1977年のリミックスバージョンの両方を収録した2枚組としてリリースされ、聴き手が両方のサウンドを比較できるようになっています。
本作のサウンドを形作った主な参加ミュージシャンは以下の通りです。
ボズ・スキャッグス - ボーカル、ギター
デュアン・オールマン - スライドギター、ドブロ・ギター
エディ・ヒントン - ギター
ジミー・ジョンソン - ギター
バリー・ベケット - キーボード
デヴィッド・フッド - ベース
ロジャー・ホーキンス - ドラムス
アル・レスター - フィドル
ジーン・ミラー - トランペット、トロンボーン
ジョー・アーノルド - テナー・サクソフォーン
ジェイムズ・ミッチェル - バリトン・サクソフォーン
ジニー・グリーン、ドナ・サッチャー、メアリー・ホリデイ - バックグラウンド・ボーカル
（その他アディショナル・ミュージシャンとして、ベン・コーリー、チャールズ・チャーマーズ、フロイド・ニューマン、トレイシー・ネルソン、アーマ・ルーテン、ジョイス・ダンが参加しています。）
特記なき楽曲はボズ・スキャッグス作曲。
Side 1
1. アイム・イージー - "I'm Easy" (Boz Scaggs, Barry Beckett) - 3:08
2. アイル・ビー・ロング・ゴーン - "I'll Be Long Gone" - 4:15
3. アナザー・デイ - "Another Day (Another Letter)" - 2:58
4. 君去りし時 - "Now You're Gone" - 3:49
5. ファインディング・ハー - "Finding Her" - 3:57
6. ルック・ホワット・アイ・ガット - "Look What I Got" (Charles Chalmers, Donna Rhodes) - 4:12
Side 2
1. ウェイティング・フォー・ア・トレイン - "Waiting for a Train" (Jimmie Rodgers) - 2:41
2. ローン・ミー・ア・ダイム - "Loan Me a Dime" (Fenton Robinson) - 12:31
3. スウィート・リリース - "Sweet Release" (B. Scaggs, B. Beckett) - 6:15
2016年再発CD (WPCR-17063)ボーナス・トラック
4. アイル・ビー・ロング・ゴーン（ショート・シングル・ヴァージョン） - "I'll Be Long Gone (Short Single Version)" - 2:27
5. アイル・ビー・ロング・ゴーン（ロング・シングル・ヴァージョン） - "I'll Be Long Gone (Long Single Version)" - 3:35
『ボズ・スキャッグス&デュアン・オールマン』は、リリースから半世紀以上が経過した現在でも、ブルース、ソウル、ロックが交錯するアメリカンルーツミュージックの傑作として、多くの音楽ファンに愛され続けています。
制作背景と録音
スキャッグスは、それまで活動を共にしてきたスティーヴ・ミラー・バンドを離れた後、『ローリング・ストーン』誌の創刊者として知られるヤン・ウェナーの尽力により、アトランティック・レコードとの契約締結に至ります。しかし、このアトランティックとの契約は本作のみで終了し、彼は1971年にはコロムビア・レコードへと新たな活動の場を移すことになります。
本作のレコーディングは、アメリカ南部アラバマ州にあるマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオで行われました。この地で活動する腕利きのセッションミュージシャン集団、通称マッスル・ショールズ・リズム・セクションが全面参加。さらに、当時まだ名を馳せる直前であったギタリスト、デュアン・オールマンも迎えられ、彼のスライドギターやドブロ・ギターがアルバムサウンドに深みを与えています。この、南部独自の土臭さと洗練されたソウルが融合したサウンドは、本作最大の魅力の一つとなっています。
収録曲の中で特にエピソードとして語られるのが、ブルースの古典ともいえる「ローン・ミー・ア・ダイム」です。この楽曲は、オリジナルLPのクレジットにおいてボズ・スキャッグスのオリジナル作品として誤って記載されていましたが、実際にはブルースマン、フェントン・ロビンソンの楽曲のカヴァーでした。この誤記は後にロビンソンからの訴訟問題に発展し、最終的にクレジットが訂正されることとなりました。
評価と反響
アルバムは発表当時のアメリカにおいては、即座に大きな商業的成功を収めることはありませんでした。しかし、リリースから時間が経過するにつれて徐々に評価が高まり、1974年7月13日付のBillboard 200で初めてチャートインを果たします。その後も順位を上げ、1976年7月24日には最高位となる171位を記録するなど、ロングセラーとして認知されていきました。
音楽評論家からも高く評価されています。オールミュージックのスティーヴン・トマス・アールワインはこの作品に5点満点中4.5点をつけ、「ソウルやR&Bを基盤にしながら、カントリーやブルースの要素も巧みに取り入れている」と分析し、特に「ブルー・アイド・ソウルの不朽の名盤」として絶賛しました。また、著名な音楽評論家ロバート・クリストガウも本作にBプラス評価を与え、「アメリカ音楽に対する良質なオマージュ」と評しています。
さらに、音楽史における重要性を示す出来事として、『ローリング・ストーン』誌が選出した「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」の2012年の改訂版において、496位にランクインを果たしました。
リイシューの変遷
本作は幾度か再発されていますが、特に大きな影響を与えたのが、1977年10月にトム・ペリーによって施されたリミックスです。この1977年版は、その後のCD再発の多くで採用されることとなりました。音楽評論家の宇田和弘氏は、このリミックスによってデュアン・オールマンのギターがより前面に出された一方で、オリジナルのマッスル・ショールズ録音らしい骨太で野性的なサウンドイメージが後退してしまったと指摘しています。
ただし、全ての再発盤が1977年版に準じているわけではありません。例えば、2015年にエドセル・レコードから発売された再発CD（EDSK 7093）は、オリジナルのミックスバージョンと1977年のリミックスバージョンの両方を収録した2枚組としてリリースされ、聴き手が両方のサウンドを比較できるようになっています。
参加ミュージシャン
本作のサウンドを形作った主な参加ミュージシャンは以下の通りです。
ボズ・スキャッグス - ボーカル、ギター
デュアン・オールマン - スライドギター、ドブロ・ギター
エディ・ヒントン - ギター
ジミー・ジョンソン - ギター
バリー・ベケット - キーボード
デヴィッド・フッド - ベース
ロジャー・ホーキンス - ドラムス
アル・レスター - フィドル
ジーン・ミラー - トランペット、トロンボーン
ジョー・アーノルド - テナー・サクソフォーン
ジェイムズ・ミッチェル - バリトン・サクソフォーン
ジニー・グリーン、ドナ・サッチャー、メアリー・ホリデイ - バックグラウンド・ボーカル
（その他アディショナル・ミュージシャンとして、ベン・コーリー、チャールズ・チャーマーズ、フロイド・ニューマン、トレイシー・ネルソン、アーマ・ルーテン、ジョイス・ダンが参加しています。）
収録曲
特記なき楽曲はボズ・スキャッグス作曲。
Side 1
1. アイム・イージー - "I'm Easy" (Boz Scaggs, Barry Beckett) - 3:08
2. アイル・ビー・ロング・ゴーン - "I'll Be Long Gone" - 4:15
3. アナザー・デイ - "Another Day (Another Letter)" - 2:58
4. 君去りし時 - "Now You're Gone" - 3:49
5. ファインディング・ハー - "Finding Her" - 3:57
6. ルック・ホワット・アイ・ガット - "Look What I Got" (Charles Chalmers, Donna Rhodes) - 4:12
Side 2
1. ウェイティング・フォー・ア・トレイン - "Waiting for a Train" (Jimmie Rodgers) - 2:41
2. ローン・ミー・ア・ダイム - "Loan Me a Dime" (Fenton Robinson) - 12:31
3. スウィート・リリース - "Sweet Release" (B. Scaggs, B. Beckett) - 6:15
2016年再発CD (WPCR-17063)ボーナス・トラック
4. アイル・ビー・ロング・ゴーン（ショート・シングル・ヴァージョン） - "I'll Be Long Gone (Short Single Version)" - 2:27
5. アイル・ビー・ロング・ゴーン（ロング・シングル・ヴァージョン） - "I'll Be Long Gone (Long Single Version)" - 3:35
『ボズ・スキャッグス&デュアン・オールマン』は、リリースから半世紀以上が経過した現在でも、ブルース、ソウル、ロックが交錯するアメリカンルーツミュージックの傑作として、多くの音楽ファンに愛され続けています。
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