ボッキディウム・チンチンナブリフェルム

ボッキディウム・チンチンナブリフェルム

ボッキディウム・チンチンナブリフェルム（Bocydium tintinnabuliferum）は、ツノゼミ科に属する昆虫の一種であり、1832年にルネ＝プリムヴェール・レッソンによって記載されました。種小名はラテン語で「鈴」を意味する“tintinnabulum”に由来し、「…を持つ」という意味の接尾辞“-fer”が組み合わされています。

分布

このツノゼミは、ブラジルのバイーア州、エスピリトサント州、リオデジャネイロ州といった地域に分布しています。

形態

全長は約5ミリメートルで、近縁種のマルヨツコブツノゼミ（B. globulare）と類似していますが、いくつかの点で区別できます。最も特徴的なのは、黒い前胸（第一胸節）から生える特異な形状の突起物です。この構造物の機能は未だ解明されていません。それは、頭部の真上にわずかに湾曲しながら立ち上がる柱状の部分と、その先端から分岐する5本の枝で構成されています。前方に向かう2本の枝の先端には小さな球状の構造があり、横向きの2本の枝には途中に球状構造があり、先端は尖っています。後方に向かう1本の枝は、正中線に沿って腹部を越えて伸び、先端が尖っています。この構造物全体は光沢のある黒色をしています。鞘翅は長方形に近く、色は褐色です。腹部はオレンジ色で、黒色の細かい斑点があります。肢は黄色をしています。メスの亜生殖板は2つに分かれており、オスでは細長く外側に湾曲しています。

生態

ボッキディウム・チンチンナブリフェルムは不完全変態を行い、単独で生活します。若虫も成虫も葉の裏に生息し、樹液を吸って生きています。成虫は夜間に人工光源に引き寄せられることが知られています。しかし、詳しい生態についてはまだ解明されていない部分が多く残されています。

近縁種

本種が属するBocydium属は南米に分布しており、いずれも独特な形態を持つツノゼミとして知られています。属名の由来については、ギリシア語で「素早い」を意味する“ōkys”と指小辞“-idium”に由来するという説があります。この説では、語頭の“B”は発音上の都合または意味を強調するために挿入されたと考えられています。一方で、「牛」を意味する“βοῦς”と「装飾」を意味する“κύδος”に由来するという説も存在します。

Bocydium属の模式種はB. globulare (= Centrotus globularis Fabricius, 1803)であり、1999年までに15の有効種が確認されていました。2017年にはさらに6種の新種が記載されています。

Bocydium amischoglohum Sakakibara, 1981
Bocydium anisobullatum Sakakibara, 1981
Bocydium astilatum Richter, 1955
Bocydium bilobum Flórez-V, 2017 ホソヨツコブツノゼミ
Bocydium bulliferum Goding, 1930
Bocydium duoglobum Cryan, 1999
Bocydium germarii Guérin-Méneville, 1844
Bocydium globulare (Fabricus, 1803) ヨツコブツノゼミ、マルヨツコブツノゼミ（英: globe-bearing treehopper）
Bocydium globuliferum (Pallas, 1766)
Bocydium hadronotum Flórez-V, 2017
Bocydium mae Flórez-V, 2017
Bocydium nigrofasciatum Richter, 1955
Bocydium racemiferum Sakakibara, 1981
Bocydium rufiglobum Fairmaire, 1846
Bocydium sakakibarai Flórez-V, 2017
Bocydium sanmiguelense Flórez-V, 2017
Bocydium sexvesicatum Sakakibara, 1981
Bocydium sphaerulatum Sakakibara, 1981
Bocydium tatamaense* Flórez-V, 2017

人との関わり

ボッキディウム・チンチンナブリフェルムは、その学名のカタカナ表記が下ネタを連想させるとして、インターネット上で話題になることがあります。2020年にはラジオ番組で取り上げられ、パーソナリティがその学名を面白おかしく紹介しました。また、別番組では出演者がこの学名を知り、「言い間違えると危険な言葉が連発している」と衝撃を受けたエピソードが語られました。

さらに、ヨツコブツノゼミをモチーフにしたキャラクター「ツノミン」がテレビ番組に登場するなど、そのユニークな存在が人々の関心を集めています。

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