ボビナム

ボビナム(Vovinam)とは

ボビナム、またはヴォヴィナム、越武道は、1936年にグェン・ロックによって創設されたベトナム発祥の総合武術です。フランスなどの列強による抑圧が続く歴史の中で、ベトナム民族の心身を鍛え、民族意識を高める目的で広められました。西洋と東洋の格闘技の要素を融合させた独特な技術体系と、武道精神を重視する点が特徴です。

ボビナムの歴史

創始者のグェン・ロックは、ベトナムの伝統武術と世界の格闘技を研究し、1936年に効率的な護身術としてボビナムを開発しました。1938年からは個人的な指導を開始し、1940年にはハノイで一般に公開されました。これを機にボビナムはベトナム全土に広まり、1954年にはグェン・ロック自身が南ベトナムに移住し、ボビナム専門の学校を設立しました。

1960年にグェン・ロックが亡くなった後、レー・サンが2代目最高師範に就任し、門派の規則やカリキュラムを整備しました。ユニフォームの色が「海と空の希望の色」である青色に定められたのもこの時期です。1990年代以降は世界各国に広がり、2000年までにオーストラリア、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、モロッコ、ポーランド、スペイン、スイス、米国に学校が開設されました。2009年には第1回世界ボビナム選手権がベトナムで開催され、2010年にはグエンバンチュウが世界最高師範に就任し、グローバルスポーツとしての地位を確立しました。

ボビナムの技術

ボビナムは、手、肘、脚、膝を使った攻撃や防御、投げ技、関節技など、多彩な技術体系を持っています。また、剣、ナイフ、扇子、爪、薙刀などの武器術も含まれます。中国拳法、古武術、西洋のレスリング、キックボクシングなど、様々な格闘技の要素を取り入れ、合理的かつ実戦的な技術を追求しています。

ボビナムの10の心得

ボビナムは、身体だけでなく精神も鍛えることを重視しています。そのために、以下の10の心得を掲げています。

1. 日々武術を精進し、何人をも守ること
2. ボビナム発展のため、次世代を教育すること
3. 年長者を敬い、仲間に心遣いを忘れないこと
4. 規則を守り、武道家としての誇りを持つこと
5. 他種格闘技を敬愛し、護身のためのみ闘うこと
6. 健全なる肉体と精神を養うこと
7. 何事にも、誠意と勇気をもつこと
8. 逆境に挑むこと
9. 正しく判断し、忍耐強く準備を怠らないこと
10. 自信と向上心で、成長の道を探ること

ロゴとユニフォーム

ボビナムのロゴは、赤と青の陰陽マークで構成されており、肉体と精神のバランスを表しています。その中心には、黄色いベトナムの国土を模したデザインが重ねられており、中庸を意味しています。ユニフォームは、1964年に公式道着として青色が採用されました。この青はボビナムのオフィシャルカラーであり、「海と空の希望の色」を象徴しています。

ボビナムの帯の色

ボビナムでは、帯の色によってレベルを表します。初心者は「新しい希望」を意味する水色の帯からスタートします。

- 青帯: 希望を表し、3段階のレベルがあります。
- 黄帯: 他の武術の黒帯に相当し、4段階のレベルがあります。インストラクター資格を持つ者は、黄帯にストラップが付きます。
- 赤帯: 血や激しい情熱を表します。
- 白帯: 無限や高い精神性を表し、世界最高師範のみが着用できます。

世界への広がり

ボビナムは、アジアだけでなく、ヨーロッパ、中東、オーストラリア、アフリカ、アメリカなど、世界中に広がっています。多くの国に本部公認のボビナム協会が存在し、国際的な競技大会も開催されています。日本においては、2011年に一般社団法人日本ボビナム協会が設立され、普及活動が行われています。

オリンピック

ボビナムは、アジアオリンピック評議会（OCA）公認のアジアインドアゲームズ及びアジアビーチゲームズ大会において正式種目となっています。

ボビナムに関わる著名人

- 金城真央: 2017年世界ボビナム選手権で銅メダル、東アジア・ボビナム選手権で金メダルを獲得した選手。
- 高橋大志: 吉本興業のお笑いコンビ「プール」のメンバーで、日本代表としても活躍。

まとめ

ボビナムは、ベトナムの歴史と文化が息づく総合武術であり、その技術体系は、護身術としてだけでなく、心身の鍛錬にも役立ちます。世界中で愛されるボビナムの魅力に触れてみてください。

出典

- 『ボビナムの教科書』、2017年、マスターフゴ、天華堂、ISBN 978-4990895617

外部リンク

- 日本ボビナム協会

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