ボビー・ジョーンズ (ゴルファー)

ボビー・ジョーンズ：ゴルフ史に輝くアマチュアの星

ロバート・タイアー・ジョーンズ・ジュニア、通称ボビー・ジョーンズは、20世紀初頭のゴルフ界を席巻したアメリカの伝説的なゴルファーです。彼はプロに転向することなく、生涯アマチュアリズムを貫き、「球聖」として世界中のゴルファーから敬愛されました。

生涯をアマチュアに捧げた理由

ジョーンズがアマチュアにこだわった理由は、単にプロの賞金を必要としなかったからではありません。彼はゴルフを愛し、競技そのものを楽しむことを大切にしていました。弁護士としての安定した収入があったことも、アマチュアとしてゴルフに打ち込むことを可能にした要因でしょう。しかし、何よりも大きかったのは、ゴルフに対する彼の純粋な情熱でした。

伝説的プレーヤー

その自制心に富むプレー態度から「球聖（きゅうせい）」、ヒッコリーシャフト時代の最も偉大な選手の一人であることから「木のシャフトの伝説」と呼ばれたゴルフ史を代表するゴルファー。彼は終生、アマチュアを貫いたことでも有名である。

グランドスラム達成

1930年、28歳のジョーンズは、ゴルフ史に残る偉業を達成します。全英アマ、全英オープン、全米オープン、そして全米アマという、当時の世界4大タイトルを全て制覇し、年間グランドスラムを達成しました。この偉業は、スポーツ界において「グランドスラム」という言葉が用いられるきっかけとなりました。

全英オープン最終日の16番ホールのグリーン手前のバンカーからの第3打でホートン・スミス（第1回マスターズ優勝者）から譲り受けたフェース面が凹面のウェッジを生涯唯一度試合で使用して、ピンそば2インチに寄せてバーディを奪って優勝争いに残り、この日75を叩くも、2位グループに2打差で優勝しました。

年間グランドスラム達成の7週間後、28歳で競技生活から引退。

カラミティ・ジェーンとの出会い

1923年、ジョーンズは「カラミティ・ジェーン」という名のL字型パターを手に入れます。このパターとの出会いが、彼のゴルフ人生を大きく変えました。カラミティ・ジェーンを手にしたジョーンズは、その後のメジャー大会で数々の勝利を飾り、伝説的な名手としての地位を確立しました。

大会前のジョーンズはショット、パットがともに不調で、大会の1週間前にコーチのスチュアート・メイドンに連れられ、ナッソーカントリークラブに立ち寄った。ラウンド後、練習グリーンにいたジョーンズに、スチュアートの兄であり、このゴルフ場所属のプロであるジム・メイドンが自分で製作したヒッコリーシャフトの中央部3カ所にテープが巻かれているパターを手渡した。ジョーンズが打ってみると、実によく入り、早速借用して、翌週の全米オープンに勝利しました。

引退後の活動

競技生活から引退後も、ジョーンズはゴルフへの情熱を失うことはありませんでした。彼はマスターズ・トーナメントの創設に尽力し、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのコース設計にも携わりました。ジョーンズの設計思想は、戦略性に富み、挑戦意欲を掻き立てるものであり、現在でも多くのゴルファーに愛されています。

ジョーンズの設計思想は、バンカーは30個足らずと少なくし、フェアウェイも普通のコースの倍近く広く、ラフも浅く、ロングホールは巧打を2回続ければグリーンに乗るように設計するというものでした。

ゴルフ界への貢献

競技ゴルフの使用クラブ数の決定にも関与しました。1936年ウォーカーカップが開催されたパインバレーゴルフクラブの駐車場のロールスロイス車中でジョーンズ（アメリカ代表）とトニー・トーランス（イギリス代表、ウォーカーカップ5回出場）が会談しました。

ジョーンズが年間グランドスラム時に使用したクラブの本数は16本、トーランスが1試合で使用したクラブの本数は最多12本で、ジョーンズが「中間をとって14本にしよう」とトーランスに告げ、トーランスがそれをR&Aルール委員長のロバート・ハリスに伝え、これが1939年制定の規定へつながったといわれています。

セント・アンドルーズとの絆

ジョーンズは、セント・アンドリュース・オールドコースをこよなく愛していました。彼はこのコースで数々の名勝負を演じ、多くの感動を与えました。1958年のスピーチで、ジョーンズは「セント・アンドルーズのコースを学べば学ぶほど、このコースをより深く愛するようになった。そして愛すれば愛するほど、より多くのことを学んだ」と語っています。

晩年と遺産

1948年に脊髄空洞症を発症し、晩年は車椅子での生活を余儀なくされましたが、ゴルフへの情熱を失うことはありませんでした。1971年に亡くなった後、1974年には世界ゴルフ殿堂入りを果たし、その功績は永遠に称えられています。

ボビー・ジョーンズは、単なる優れたゴルファーではありません。彼はゴルフの精神を体現し、スポーツマンシップの模範を示しました。彼のゴルフ哲学と人格は、今日でも多くのゴルファーに影響を与え続けています。

もう一度検索