ボブ・ジョンストン

テキサス州ヒルズボロ生まれのボブ・ジョンストン（本名ドナルド・ウィリアム・ジョンストン、1932年5月14日 - 2015年8月14日）は、アメリカ音楽界において多大な影響力を持った音楽プロデューサーである。ボブ・ディラン、ジョニー・キャッシュ、サイモン&ガーファンクルをはじめとする、数々の伝説的なアーティストたちの重要な作品に携わった。音楽が身近な環境で育ち、祖母も母もソングライターであった。母ダイアン・ジョンストンはジーン・オートリーに楽曲提供した経歴を持ち、彼女の曲「Miles and Miles of Texas」は後にカバーされ、カントリーチャート入りしている。

海軍除隊後、ジョンストンは故郷に戻り、母と共にロカビリー歌手マック・カーティスへ楽曲を提供。自身も1956年から1961年頃まで「ドン・ジョンストン」名義でロカビリー歌手として数枚のシングルを発表した。1964年までにニューヨークへ移り、レコード会社のカップ・レコードでプロデューサーとしてのキャリアを開始。フリーランスでアレンジやソングライティングも行い、この頃ソングライターのジョイ・バイヤーズと結婚した。

彼の名が広く知られるようになったのは、ボブ・ディランとの共同作業によってである。1965年6月、ディランのプロデューサー交代に伴い、同年7月末からジョンストンがその役割を引き継いだ。彼は1970年のアルバム『新しい夜明け』までディラン作品に関与し、『ブロンド・オン・ブロンド』、『ジョン・ウェズリー・ハーディング』、『ナッシュヴィル・スカイライン』といった革新的な名盤の誕生を支えた。

ディラン以外にも、ジョンストンは多くの著名なアーティストのサウンドを作り上げた。サイモン&ガーファンクル、レナード・コーエン、ジョニー・キャッシュ、マーティ・ロビンズ、ニュー・ライダーズ・オブ・ザ・パープル・セイジなど、そのクライアントは多彩であった。特にジョニー・キャッシュとは緊密な関係を築き、『アット・フォルサム・プリズン』や『アット・サン・クエンティン』といった歴史的なライブアルバムをプロデュース。また、英国のバンド、リンディスファーンのアルバム『Fog on the Tyne』（1971年）を手がけ、全英チャート4週連続1位という大きな成功を収めている。

プロデュース業の傍ら、ジョンストンはミュージシャンとしても活動することがあった。1970年のワイト島音楽祭でレナード・コーエンが出演した際、彼はキーボードまたはギターでバンドメンバーとして演奏をサポート。このライブの音源は、2009年の公式リリース『Live at the Isle of Wight 1970』に収録されている。

アメリカ音楽史に多大な貢献をしたボブ・ジョンストンは、2015年8月14日、ナッシュビルにて83歳で亡くなった。妻のジョイ・バイヤーズも2017年5月10日に他界した。彼がプロデュースした作品群は、ジャンルを超えて今なお多くの人々に聴き継がれており、その業績は高く評価され続けている。

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