ボラクチン (オゴデイ皇妃)

ボラクチン（生没年不詳）は、モンゴル帝国の第2代皇帝オゴデイ・カアンの第一皇后であり、モンゴル語ではBoraqčin qatunと記されます。漢文史料では孛剌合真、ペルシア語史料ではBūrāqchīn khātūnと記録されています。

概要

『集史』において、ボラクチンはオゴデイの「第一の妃」であり、「全皇后たちのうちで最も年上であった」と記されています。『元史』でも「正宮孛剌合真皇后」とされ、オゴデイの妃の中で最も高い地位にありました。しかし、『集史』には彼女の出身部族や父親の名前が記されておらず、その出自については不明な部分が多く残されています。

ボラクチンの事績に関する記録は多くありませんが、オゴデイの五男であるカシンとともに、『道蔵』の刊行を支援したことが知られています。『道蔵』は儒書、医書、陰陽、卜巫、諸子百家を網羅するもので、彼女が平陽路に『道蔵』の刊行に関する指示を出した命令文が、ウイグル文字モンゴル語で碑文に記録されています。この事実は、ボラクチンが文化的な事業に深く関与していたことを示唆しています。


参考文献

松田孝一「オゴデイ諸子ウルスの系譜と継承」『ペルシア語古写本史料精査によるモンゴル帝国の諸王家に関する総合的研究』、1996年
宇野伸浩「チンギス・カン家の通婚関係の変遷」『東洋史研究』52号、1993年
* 宮紀子『モンゴル時代の「知」の東西』名古屋大学出版会、2018年


ボラクチンは、記録こそ少ないものの、オゴデイの治世において重要な役割を果たした女性であったと考えられます。彼女の出自や具体的な活動については、今後の研究によって更なる解明が期待されます。

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