ボルクヴァルト・イザベラ

ボルクヴァルト・イザベラ：ドイツ中型車の金字塔

ボルクヴァルト・イザベラは、ドイツの自動車メーカー、ボルクヴァルト社が1954年から1962年にかけて製造した2ドア中型乗用車です。当初は前身モデルと同じく「ボルクヴァルト・ハンザ1500」と呼ばれていましたが、1957年モデルから開発コードネームであった「イザベラ」に改名されました。現在では、1957年以前のモデルも区別するために、一般的に「イザベラ」と呼ばれています。

1954年の発売と同時に高い人気を獲得し、ボルクヴァルト社において最も成功した車種となりました。発売初年度には11,150台という驚異的な生産数を記録しています。価格はDM7,265と、同クラスのオペル・レコルトやフォード・タウヌスよりも高価でしたが、メルセデス・ベンツ180よりも安価に設定され、アッパーミドルクラスの顧客層に支持されました。

イザベラは、ボルクヴァルト社にとって画期的なモデルでもありました。同社初のフレームレス・モノコック構造を採用し、軽量かつ高剛性なボディを実現しました。さらに、油圧式クラッチやコラムシフト式の4速全シンクロメッシュトランスミッションといった、当時としては先進的な技術を搭載していました。サスペンションはメルセデス・ベンツ譲りのスイングアクスル方式を採用し、快適な乗り心地を提供しました。エンジンは1,493ccで、初期モデルの最高出力は60馬力でした。

1955年には、ボディバリエーションが拡大しました。実用性を重視したエステートワゴン、開放的な走りを求める顧客向けの2ドアカブリオレ、そして最高出力を75馬力に向上させたTSモデルが追加されました。カブリオレモデルはケルンのカール・ドイチュ社によって製造されましたが、ボディ強度の維持のため、セダンモデルに比べて大規模な改造が必要となり、価格も大幅に高価でした。

しかし、初期モデルで発生した品質問題などが原因で、販売台数は減少傾向にありました。この状況を打開するため、1957年にはスポーティなクーペモデルが追加されました。そして1958年には、75馬力エンジンが全車種に標準搭載されるようになりました。

ボルクヴァルト社は1961年に経営破綻しましたが、イザベラの生産は在庫車の販売や部品供給を通じて1963年まで続けられました。最終的な生産台数は20万台を超える202,862台に達しました。日本にも輸入され、当時輸入総代理店であった新朝日自動車（現トヨタカローラ東京の前身）を通じて比較的多くのイザベラが販売されました。

生産設備はメキシコに売却され、1960年代を通じてイザベラの生産が続けられました。イザベラの市場はその後、主にBMW1500によって引き継がれたと言われています。イザベラは、ボルクヴァルト社の歴史の中でも重要な位置を占める車種であり、その革新的な技術とデザインは、後の自動車開発に大きな影響を与えました。

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