フォード・タウヌス

フォード・タウヌス：ドイツが生んだロングセラーファミリーカー

フォード・タウヌスは、1939年から1982年まで欧州フォードがドイツで生産・販売した、長く愛されたファミリーカーです。その歴史は、戦前の小型大衆車「アイフェル」の後継モデルとして登場したG93Aから始まります。タウヌスという車名は、ドイツのタウヌス山地に由来しており、ドイツ国内の山地名から命名されたモデルです。

戦前・戦後のタウヌス：G93A/G73AとMシリーズの黎明期

1939年にデビューしたG93Aは、ドイツ・フォードが第二次世界大戦前に発表した最後の新型車でした。油圧ブレーキや流線型のボディを採用するなど、近代的なデザインが特徴でしたが、エンジンやシャシーはアイフェルから受け継いだ保守的な設計でした。第二次世界大戦により生産は一時中断されましたが、1948年に改良を加えたG73Aとして生産が再開されました。

戦後、フォード・タウヌスは「Mシリーズ」として新たなステージへ。12Mや15Mといった、排気量を示す数字と「Meisterstück（傑作）」を意味するMを組み合わせた名称が用いられました。小型の12M/15Mシリーズと、中型の17M/20Mシリーズの2つのラインが存在しました。初代12M/15M（G13系）は、モノコックボディやマクファーソンストラット式サスペンションなど、戦後最新の技術を取り入れつつも、エンジンは従来型のサイドバルブ式エンジンでした。1955年にはOHVエンジンを搭載した15Mが追加され、1959年にはフロントグリルが変更されました。

その後、初代のボディを改良した2代目、そして全く新しい設計で登場した3代目（P4系）へと進化。3代目では、縦置きV型4気筒エンジンと前輪駆動を採用し、コンパクトなエンジンながら広々とした室内空間を実現しました。このエンジンは、スウェーデンのサーブにも供給されました。

1960年代の進化：P6系、そして17M/20M/26Mシリーズ

1966年に登場した4代目（P6系）は、流行のロングノーズ・ショートデッキスタイルを採用し、1500ccと1700ccエンジンを搭載した「15M」が復活しました。1700ccエンジンはマトラのスポーツカーにも使われました。1969年からは車名から「タウヌス」が外され、「フォード 12M」といった表記に変更されました。

一方、17M/20M/26Mシリーズは、戦後の経済復興に伴い、より大型の車種への需要に対応して追加されたモデルでした。初代（P2系）は、アメリカのフォードのデザインを彷彿とさせるスタイルで、オペル・レコルトと競合しました。2代目（P3系）はエアロダイナミックなデザインで成功を収め、U字型のバンパーやヘッドランプのデザインは、アメリカ車の影響が見られました。特にステーションワゴンのテールランプは、リアウインドウ上に配置された珍しいデザインでした。このモデルは、日本のテレビドラマ「ザ・ガードマン」でパトロールカーとして使用され、広く知られることとなりました。3代目（P5系）は先代のデザインを踏襲しつつ、より保守的なデザインとなり、V型6気筒エンジンを搭載したモデルも登場しました。4代目（P7系）はアメリカ風デザインに一新されましたが、翌年にはマイナーチェンジを行い、P7.2となりました。

英国フォードとの統合とその後：タウヌスTCとマークIII

1970年に登場したタウヌスTCは、12M/15Mの後継車種として、2ドア/4ドアセダン、クーペ、ワゴンがラインナップされました。しかし、設計は英国フォードの影響が強く、フォード・コーティナとほぼ共通の設計でした。ドイツの愛好家からは、保守的な設計への批判もありました。1976年のフルモデルチェンジ後、タウヌスはコーティナと完全に同一の車となり、1979年にはフェイスリフトを受けました。1982年、新型シエラが登場するまで生産が続けられ、フォード・タウヌスの歴史に幕を閉じました。

フォード・タウヌスは、時代と共に進化を遂げ、ドイツ自動車史に大きな足跡を残しました。その歴史は、技術革新とデザインの変遷、そして時代背景を反映した、興味深い物語です。

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