ボルデテラ属

ボルデテラ属の詳細

ボルデテラ属（学名：Bordetella）は、Pseudomonadota門に属するベータプロテオバクテリア綱の一つであり、主に哺乳類や鳥類の呼吸器系に寄生しています。これらの細菌は、グラム陰性の非芽胞形成の球桿菌で、大きな特徴は好気性で鞭毛を持ち運動する能力を有する点です。特に、百日咳菌（Bordetella pertussis）がこの属の代表的存在であり、この種が引き起こす百日咳は非常に知られています。

病原性と感染メカニズム

ボルデテラ属の細菌は、主に気管支敗血症菌、百日咳菌、パラ百日咳菌の3種が病原性を持ち、呼吸器の感染症を引き起こします。これらの細菌に感染する経路は主に接触感染や飛沫感染です。感染が成立すると、細菌は鼻咽頭の繊毛上皮細胞に付着し、ここからさらに気道へと拡散します。この付着には、細菌が持つ特定のタンパク質因子が関与しており、特に百日咳菌が産生する百日咳毒素は重要な役割を果たします。

初期の感染症状は風邪に似たカタル性の炎症であり、この期間においては多数の細菌が確認されることがあります。細菌が気道に拡散すると、毒素が気道の線毛運動を阻害し、気管支繊毛上皮細胞への侵入を容易にします。これにより、体の免疫反応が低下し、さらなる病態が進行することになります。

毒素の役割と影響

ボルデテラ属が産生する毒素の一つ、気管細胞毒素は、線毛運動の阻害や上皮細胞のDNA合成の抑制を引き起こし、最終的には細胞の死も引き起こします。また、アデニル酸サイクラーゼを阻害する毒素も重要であり、免疫系の機能を部分的に抑制することによって、感染をさらに助長します。

最近の研究では、BvgASという二成分制御系がボルデテラ属の病源因子の産生調節に寄与していることが明らかになっています。この制御系は、細菌が外部の刺激に応じてどのように反応するかを決定づけるもので、特にBvgSというセンサーが重要です。研究によれば、BvgASの活性化状態が中間レベルにあることで、細菌の生存に有利な状況を作り出すことが示されています。

ボルデテラ属の種と最新の知見

ボルデテラ属には、いくつかの種が確認されています。主なものには、百日咳菌（Bordetella pertussis）、気管支敗血症菌（Bordetella bronchiseptica）、パラ百日咳菌（Bordetella parapertussis）などがあります。特に百日咳菌は、感染が急激に広がる特性を持ち、感染症の重症化を引き起こすため、注意が必要です。

新たな研究が進む中、ボルデテラ属の細菌は感染症の理解において重要な鍵を握っています。これらの細菌がどのようにして宿主の免疫から逃れるのか、またいかにして病原性を示すのかを解明することは、今後の感染症治療において大きな意義を持つでしょう。

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