ボルボ・740

ボルボ740：安全性を追求した実用車

ボルボ740は、1984年から1992年にかけて製造されたボルボの乗用車で、4ドアセダンとステーションワゴン（エステート）のボディタイプがありました。高級モデルである760シリーズをベースにしながら、コストを抑えた点が特徴です。実際には、それまで長く生産されていた240シリーズの事実上の後継車として位置づけられていました。

開発背景と市場投入

1984年のデビュー後、1985年には日本やアメリカ市場にも進出しました。当時のライバル車種としては、アウディ100 C3などが挙げられます。740の「4」は4気筒エンジンを表しており、760シリーズと共通のボディ設計を採用しつつ、エンジンをよりベーシックな直列4気筒エンジンに絞り込み、装備を簡素化することでコストパフォーマンスを高めました。また、クロームパーツなども削減されています。

700シリーズから、燃料タンクをリヤアクスルよりも前方の車体中央寄りに配置することで、追突事故における燃料タンク破損のリスクを軽減する設計が採用されました。さらに、シートベルトのアンカーをシート本体に固定することで、いわゆる「サブマリン現象」と呼ばれる、衝突時に乗員がシートの下に潜り込む現象の防止にも配慮しています。

740は登場から10年以上が経過していた240シリーズの後継モデルとして位置づけられましたが、より低価格なモデルを求めるユーザー層への対応のため、240シリーズも下位グレードに絞って併売されました。

モデルの変遷とデザイン

740の外装デザインは、760シリーズと共通点が多く見られます。ただし、タイヤサイズやアルミホイールのデザインは異なります。1989年にはマイナーチェンジを実施。ヘッドランプやフロントグリルデザインが変更され、セダンモデルのテールランプは780シリーズを彷彿とさせる専用デザインへと変更されました。ターボモデルには、940シリーズと共通の横長ヘッドランプが採用されました。

1991年には、740シリーズの大幅な改良版である940シリーズや、240シリーズの後継モデルとなる850シリーズが登場しました。これにより740シリーズの生産台数は徐々に減少し、1992年には940シリーズへの完全移行が完了しました。

エンジンとパワートレイン

搭載エンジンは、地域によって直列4気筒ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのバリエーションがありました。日本市場では、2.3リットル直列4気筒ガソリンエンジンがNAとターボの2種類がラインナップされました。

安全性とマーケティング

740/760シリーズのテレビコマーシャルでは、安全性を強調した内容が多く放送されました。例えば、車両を建物から落下させる実験映像や、衝突実験の様子、さらには豪雪地帯でのドリフト走行シーンなども使用されました。日本での放送では、「740シリーズ全車にABS標準装備」、「ボルボはあなたを守ります」といったテロップが表示されたり、「ボルボは乗る人を守るため、毎週2台ずつ新車を壊し続けます」といったナレーションが付け加えられたりと、安全性を強くアピールする戦略がとられました。

グレードバリエーション

740シリーズは、様々なグレードが設定されていました。主なグレードとしては、740、740GLE、740GLT、740ターボ、740ディーゼルなどがあり、エンジンや装備の組み合わせによって細かなバリエーションが存在しました。地域限定モデルも存在しており、スウェーデン限定の740Polarや、イタリア限定の740ターボ（2.0L）などが挙げられます。

まとめ

ボルボ740は、安全性を重視した設計と、多様なグレード展開によって、幅広いユーザー層に支持されたモデルでした。240シリーズから受け継いだ実用性と、760シリーズ譲りの洗練されたデザインを融合させ、ボルボブランドの地位向上に貢献しました。その安全性を重視した姿勢は、後のボルボ車の開発にも大きな影響を与えています。

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