ボロト・テムル

ボロト・テムルの生涯と功績

ボロト・テムル（Bolod temür、? - 至正25年7月29日（1365年8月16日））は、モンゴル帝国の大元ウルスで活躍した著名な将軍です。彼は数代にわたるモンゴルの武将の家系に生まれ、特にサルジウト部に所属していました。父のタシュ・バートルは反乱の鎮圧に功績を残し、その影響でボロト・テムルも幼少期から父の下で軍事活動に従事しました。

ボロト・テムルは若い頃から父に従い、数々の戦いでその手腕を発揮しました。至正18年（1358年）には河南行省の平章政事に任じられ、そこで反乱軍である紅巾軍と壮絶な戦闘を繰り広げました。彼は敵を打ち破り、多くの戦果を上げ、元朝の権威を高めました。その後、至正19年（1359年）には大同に入城し、山西北部から内モンゴル南部にかけての地域を支配する大軍閥としての地位を確立しました。

しかし、彼の成功は同時に新たな敵を生む結果となりました。特に、河南において共に戦った軍閥のチャガン・テムルとの間で権力争いが生じ、その争いは元朝の皇太子アユルシリダラとの権力闘争とも絡み合って深刻な事態を招きました。ボロト・テムルは皇太子と敵対し反皇太子派の支持を受ける一方で、宮廷内での影響力を増していきました。

至正24年（1364年）、ボロト・テムルは宮廷内での権力闘争に介入しますが、その結果として自身の立場も危うくなってきました。彼は軍を動かしてアユルシリダラを追放し、全権を掌握することに成功しました。大都に入ったボロト・テムルはウカアト・カアンによって中書右丞相に任命され、その政権を強固にしようとしました。

しかし、彼の統治は必ずしも順調ではありませんでした。宦官や僧侶を排除しようとする試みは、反発を招き、彼自身の統治に対する不満を高めていきました。翌年にはアユルシリダラの反撃の準備が進められ、彼は再び大同へと軍を進めてきました。

迎撃に出ようとしたボロト・テムルでしたが、運悪く悪天候に見舞われ、軍は戦意を失ってアユルシリダラに降伏してしまいます。彼の兵士たちが離反する中、ボロト・テムルは絶望的な状況に陥り、恐怖政治を強化しましたが、これによって政権への反発はさらに強まりました。

ついには、ウカアト・カアンの側近である義王コシャンがボロト・テムル暗殺を命じるに至りました。至正25年（1365年）7月、彼は上都で勝利を収めたとの報を受けていた矢先、待ち構えていた刺客たちに襲撃されて命を落としました。ボロト・テムルの死により、彼の軍閥は壊滅し、アユルシリダラとココ・テムルが政権を握ることとなります。

ボロト・テムルは優れた軍事指導者として有名でしたが、内紛や権力争いの中で利益を追求した結果、逆臣として殺害された歴史的な人物でもあります。彼の生涯は、モンゴル帝国における権力闘争の激しさを物語っています。

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