上都

上都（ザナドゥ）：草原に消えた元朝の夏の都

上都は、モンゴル帝国の創始者クビライ・カアンが、現在の中国内モンゴル自治区に建設した都です。元朝の夏の首都として機能し、皇帝の避暑地、政務の場として重要な役割を果たしました。西洋では「ザナドゥ」の名で知られ、その存在は夢とロマンをかきたてます。

上都の歴史

クビライは即位前、金蓮川と呼ばれる草原に幕営を構え、南宋征服の指揮を執っていました。1256年、劉秉忠に命じて閃電河のほとりに開平府を建設させ、これが上都の始まりとなります。1279年に南宋が滅亡すると、首都は大都（現在の北京）へ移されますが、開平府は上都と改名され、夏の間の都として機能しました。

上都は正方形に近い形状で、外城、内城、宮城の三重構造を持っていました。都市計画には風水の影響が見られ、仏教と道教の大論争の舞台にもなりました。この論争の結果、チベット仏教が北東アジアに広まることになります。

上都の構造

外城

外城は版築で築かれ、内城を囲むようにL字型をしていました。北側は御苑として利用され、クリルタイなどの重要な会議が開かれました。西南部は寺院、道観、官庁、市街地として機能していました。

内城

内城は長方形をしており、碁盤目状の通りが走っていました。南側は官庁街や貴族の邸宅が並び、北側には宮城、龍光華厳寺、乾元寺、華厳寺、孔廟などの寺院、天文台が配置されていました。貴族や将軍がゲルを張れるように、広い空き地も確保されていました。

宮城

宮城は内城の中央に位置し、紫禁城の40%ほどの大きさでした。宮城内には、大安閣、承応闕、儀天殿など様々な宮殿が建てられました。大安閣はクビライの即位時に正殿として使われ、各国からの使節が謁見しました。

上都の衰退と終焉

上都は、元朝皇帝の避暑地として重要な役割を果たしましたが、食糧や物資の輸送を華北に依存していたため、都市としての発展には限界がありました。元末期には紅巾の乱によって一時占領され、宮殿が焼き払われました。その後、明朝軍によって占領され、放棄されました。

ザナドゥ伝説

マルコ・ポーロは『東方見聞録』の中で、ザナドゥ（上都）の壮麗さを描写しました。その記述はヨーロッパの人々に大きな影響を与え、サミュエル・テイラー・コールリッジの詩『クブラ・カーン』に登場するなど、理想郷の象徴として語り継がれています。

世界遺産

現在、上都の遺跡は草原の中にひっそりと佇んでいます。2012年には、遊牧民族と農耕民族の文明の衝突と融合を示す貴重な場所として、ユネスコの世界遺産に登録されました。登録範囲には、都城遺跡のほか、鉄幡竿運河や砧子山墓地も含まれています。

上都は、元朝の繁栄と衰退、東西文化の交流を物語る貴重な遺跡です。その歴史的価値は、これからも世界に語り継がれていくでしょう。

登録基準

世界遺産登録基準は以下の通りです。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの（この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている）。

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