ボーイズ・タウン・ギャング

ボーイズ・タウン・ギャング（Boys Town Gang）は、1980年代初頭にアメリカ合衆国、カリフォルニア州サンフランシスコで誕生し、同地を拠点に精力的に活動した音楽グループです。彼らの音楽性は、当時のダンスフロアを席巻していたディスコサウンドを基盤としつつ、その後のダンスミュージックシーンにおいて重要な位置を占めるHi-NRG（ハイ・エナジー）サウンドの先駆けと位置づけられています。

グループの特徴と音楽スタイル

グループの構成は、その活動期間を通じて、パワフルかつ伸びやかな歌声を持つ女性リードヴォーカリスト、ジャクソン・ムーアを中心としていました。彼女の傍らを固めるのは複数の男性サブヴォーカリストで、活動初期には2名、後期には3名以上と人数が変動しました。この男女混合、かつリードとサブに分かれたボーカル体制が、彼らの楽曲に多様な表現力をもたらしました。

ボーイズ・タウン・ギャングの最大の功績の一つは、既存の様々なジャンルの楽曲を、独自のアップテンポでグルーヴィーなディスコ/Hi-NRGスタイルにアレンジし、ヒット曲として蘇らせたことにあります。彼らの手にかかると、往年の名曲が瞬く間にダンスフロア仕様のアンセムへと変貌しました。グループ名に冠された「ボーイズ・タウン」という言葉は、ドイツのゲイ・カルチャーに由来するユーロ・ディスコの流れを意識したものであり、彼らが単なるアメリカ国内のグループに留まらず、ヨーロッパ市場をも強く意識していたことがうかがえます。実際、彼らはこの方向性をもってヨーロッパでも成功を収めました。

「君の瞳に恋してる」の世界的成功

ボーイズ・タウン・ギャングの代表曲として、そして彼らを世界的に有名にした楽曲として挙げられるのが、フランキー・ヴァリによって広く知られるようになった名曲「君の瞳に恋してる（Can't Take My Eyes Off You）」のカバーバージョンです。この曲は、1981年にリリースされた彼らのアルバム『Disc Charge』に収録されました。原曲の持つ甘く切ないメロディーを、彼らは一転して華やかで疾走感あふれるディスコナンバーへと生まれ変わらせました。

このカバーバージョンは、アルバム発表の翌年、1982年7月にシングルとしてカットされると、瞬く間に世界中のチャートを駆け上がりました。特にヨーロッパでの人気は凄まじく、イギリスのシングルチャートで4位、アイルランドで5位を記録したほか、ダンスミュージックへの造詣が深いオランダとベルギーでは見事チャートの頂点である1位を獲得しました。これらの成功は、彼らのディスコ/Hi-NRGアレンジが国境を越えて受け入れられたことを証明しました。

そして、日本の音楽シーンにおいても、「君の瞳に恋してる」は大旋風を巻き起こしました。オリコン洋楽シングルチャートにおいて、1982年12月6日付のチャートで初めて首位に立ち、そこから3週連続で1位を維持するという快挙を達成しました。この日本での大ヒットは、当時の日本のリスナーが、洗練された洋楽ダンスミュージック、特にボーイズ・タウン・ギャングのようなハッピーでダンサブルなサウンドを求めていたことの証であり、彼らの名前は日本でも広く浸透することとなりました。

音楽史における位置づけ

ボーイズ・タウン・ギャングが生み出した、メロディアスでありながらも圧倒的な運動量を持つサウンドは、1980年代を通じて多くのフォロワーを生み出すことになります。特に、彼らのエネルギッシュでアップテンポなスタイルは、Hi-NRGというジャンルが確立され、隆盛を極める上で重要な役割を果たしたと評価されており、その先駆的な存在として音楽史に名を刻んでいます。

ディスコグラフィー

彼らがリリースした主な作品は以下の通りです。

シングル

1981年: Remember Me / Ain't No Mountain High Enough
1981年: Cruisin' The Streets
1981年: You're The One / Disco Kicks
1982年: Can't Take My Eyes Off You
1981年: Come and Get Your Love
1982年: Jump Shout / Rocket To Your Heart / Disco Kicks
1982年: Signed, Sealed, Delivered (I'm Yours)
1983年: Can't Take My Eyes Off You / I Just Can't Help Believing / Die Hard Lover / When Will I See You Again
1984年: Brand New Me　/ In And Out of Love
1984年: Dance Trance Medley / A Good Man (Is Hard To Find)
1984年: Yester-Me, Yester-You, Yesterday / When I Was Young

アルバム

1981年: Cruisin' The Streets
1982年: Disc Charge
1984年: A Cast Of Thousands

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