ボーダー 二つの世界

『ボーダー 二つの世界』：独特の嗅覚と衝撃の真実

2018年に公開されたスウェーデン映画『ボーダー 二つの世界』（原題：Gräns）は、アリ・アッバシ監督によるダークファンタジー作品です。同作は、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの短編小説を原作とし、アッバシ監督、イサベラ・エクルーフ、リンドクヴィストの共同脚本で映画化されました。

この映画は、第71回カンヌ国際映画祭で「ある視点賞」を受賞し、第91回アカデミー賞では外国語映画賞へのノミネートこそ逃したものの、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされるなど、高い評価を得ています。Rotten Tomatoesでは批評家からの支持率97％、Metacriticでも高評価を獲得しており、その質の高さがうかがえます。

物語：孤独な税関職員と謎めいた旅行者

主人公は、北欧の国境で働く税関職員ティーナ。彼女は生まれつき、人の罪悪感を嗅ぎ分ける特殊な嗅覚を持っています。その能力を駆使し、密輸犯や違法行為者を次々と検挙し、高い評価を得ています。しかし、ティーナは自身の容姿や特殊な能力ゆえに、深い孤独感を抱えていました。犬のブリーダーであるローランドと暮らしていますが、夫婦関係はうまくいっていません。

そんなある日、ティーナは税関でヴォーレという怪しい旅行者を検査します。検査では何も不審な点は見つかりませんでしたが、ティーナはヴォーレから独特の匂いを感じ取ります。ヴォーレは男性の姿をしていますが、生殖器は女性のものです。ティーナの鋭い嗅覚は、ヴォーレが人間ではない何かであることを示唆していました。

ヴォーレはティーナに、自身が「トロル」という種族であることを明かします。ティーナはヴォーレの異質な魅力に惹かれ、彼を自宅に招き入れ、親しく付き合うようになります。やがて、ティーナはローランドを家から追い出し、ヴォーレと暮らすことを選びます。

衝撃の真実と倫理の葛藤

しかし、二人の穏やかな生活は長くは続きません。ティーナはヴォーレの自宅の離れにある冷蔵庫で、赤ん坊のような存在を発見します。それは「ヒイシット」と呼ばれる、ヴォーレが定期的に産む未受精卵でした。ヒイシットは土くれのように意識がなく、すぐに死んでしまいます。

この発見から、ヴォーレの恐るべき真実が明らかになります。ヴォーレは、人間を憎んでおり、ヒイシットを人間の赤ん坊とすり替える「取り替え子」を行い、さらった人間の赤ん坊を児童ポルノ業者に売っていたのです。ティーナは、ヴォーレの行為を知り、激しい葛藤を経験します。

最終的に、ティーナは人間としての倫理観に従い、ヴォーレの逮捕に協力します。手錠をかけられたヴォーレは海に身を投げて姿を消します。その後、ティーナの元に大きな木箱が届き、中にはヴォーレが産んだ、ティーナとの元気な赤ん坊のトロルが入っていました。

映画の魅力と評価

『ボーダー 二つの世界』は、独特の世界観と衝撃的なストーリー展開で、観客を魅了する作品です。エヴァ・メランデルとエーロ・ミロノフの素晴らしい演技も、映画の質を高めています。人間の姿をした異形の存在、種族間の愛憎、倫理観の葛藤など、様々なテーマが複雑に絡み合い、観る者に深い印象を与えます。

映画は高い評価を得ており、批評家からも絶賛されています。スリリングで予測不能な展開、そして圧倒的な演技は、多くの観客を虜にしました。独特の世界観と深いテーマ性、そして高い完成度によって、『ボーダー 二つの世界』は、現代社会におけるアイデンティティや倫理観を問いかける、傑作と言えるでしょう。

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