ボーダー・コリー

ボーダー・コリー：知性と運動能力を兼ね備えた牧羊犬

ボーダー・コリーは、イギリス原産の牧羊犬種で、その名前はイングランドとスコットランド、イングランドとウェールズの国境地域に由来します。ブリティッシュコロンビア大学の研究では、全犬種の中で最も知能が高い犬種とされています。

概要

ボーダー・コリーは、牧羊犬として世界中で広く使われています。特にオーストラリアやニュージーランドでは、牧羊が主要産業であるため、ボーダー・コリーの貢献は非常に大きいと言えます。また、運動能力と訓練性能に優れているため、アジリティ、ディスクドッグ競技、フライボール、ドッグダンスなど、様々なドッグスポーツを楽しむことができます。近年では、ショー・ドッグや家庭犬としても人気が高まっています。

"ボーダー"という名前は、イングランドから見てスコットランドが辺境にあたることから、「辺境の牧羊犬」という意味合いを持っています。

歴史

ボーダー・コリーのルーツは、8世紀から11世紀にかけてヴァイキングがスカンディナヴィア半島からイギリスに持ち込んだトナカイ用の牧畜犬であると考えられています。これらの犬は、土着の牧羊犬やラフ・コリーと交雑しながら、イギリスの羊毛生産を支える重要な役割を果たしました。一部はオーストラリアやニュージーランドに渡り、同様に牧羊犬として活躍しました。

19世紀中頃から、ラフ・コリーは選択交配によって改良が進められ、1886年頃には現在の姿となり、ショー・ドッグとしての道を歩み始めました。一方、ボーダー・コリーやビアデッド・コリーは、生粋の牧羊犬として牧場で使役され続けました。作業能力を重視した繁殖の結果、ボーダー・コリーの使役価値は高まり、ショー・ドッグとなったラフ・コリーの分まで使役されるようになったと言われています。

牧羊犬としての作業能力が最重視されたため、ボーダー・コリーは外観やサイズの統一性に欠け、畜犬団体の公認が遅れました。イギリスのケネルクラブによる公認は1976年、国際畜犬連盟（FCI）の公認は1987年になってからです。

特徴

体格: 中型犬
外観: 背中に天使の羽根のような白い毛が生えている個体もいます。
性格: 従順、機敏、利口。運動能力が高く、活発で「ハイパーアクティブ」と言われることもあります。全犬種の中で最も知能が高いとも言われています。
耳: 高い位置にあり、物音に敏感に反応する立耳または半立耳
眼: 離れていて卵型
口吻: 先細でやや鈍角
噛み合わせ: シザース・バイト
体高: オス約53cm、メスはそれより少し低い
体長: オスもメスも体高より少し長い
体重: 14-22kg。近年では12kg未満の個体も増えており、「ミニボーダーコリー」と呼ばれることもあります。
毛色: ブラックアンドホワイトが基本ですが、レッド、チョコレート、ブルー、ブルーマール、セーブルなど多様な毛色があります。有色部分が体の50%以上を占め、アイリッシュスポット（四肢先端部、首、頭部の白い部分）に斑模様が入ることもあります。
毛質: 長毛のダブルコート（ラフコート）が基本ですが、短毛（スムースコート）も存在します。ストレートの毛並みから、ややうねったカールを持つ個体もいます。
寿命: 12-15歳（飼育環境、個体差、遺伝などによって異なります）

遺伝性疾患

ボーダー・コリーには、以下の遺伝性疾患が好発します。

股関節形成不全
肘関節異形成
セロイドリポフスチン症（CL病）
グレーコリー症候群
コリーアイ異常（CEA）
停留睾丸

特にセロイドリポフスチン症（CL病）は、発症すると死に至る病気です。DNA検査でクリア（遺伝子を持たない）、キャリア（遺伝子を持つが発症しない）、発症の3種類を判別できます。クリア同士の交配によって確実に無くせる疾患であるため、繁殖前の検査が推奨されます。

股関節形成不全、肘関節異形成も頻発する疾患であり、遺伝的な要因が大きいです。これらの疾患については、JAHD（日本動物遺伝病ネットワーク）での診断結果がJKC（ジャパンケネルクラブ）の血統証明書に記載されます。

飼育の注意点

フィラリア予防薬: コリー系の犬種は、イベルメクチンを含むフィラリア予防薬に注意が必要です。獣医師に薬剤名を確認しましょう。
運動: 激しい作業に耐えられる体力があるため、十分な運動が必要です。
しつけ: 知能が高いため、一貫性のある毅然とした態度で根気よくしつけることが大切です。
換毛期: 換毛期には、こまめにブラッシングして無駄毛を取り除き、皮膚病を予防しましょう。

その他

イギリス、オーストラリア、ニュージーランドでは、牧羊犬の能力を競うシープドッグトライアルが盛んに行われています。日本では、2007年にボーダーコリーレスキューネットワークが設立され、保護活動などを行っています。

参考文献

愛犬の友編集部編『ボーダー・コリー』誠文堂新光社、2004年
佐草一優『人気犬種166カタログ』グラスウインド、2004年
「ボーダー・コリー」『世界の犬』ジャパンケネルクラブ

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