ポコノ・レースウェイ

ポコノ・レースウェイは、ペンシルベニア州ロングポンド市にある、周長2.5マイル(約4023メートル)のオーバルトラックです。7万6812人を収容できる観客席を備え、1971年の創業以来、数々の名勝負を繰り広げてきました。

このトラックの最大の特徴は、そのコースレイアウトにあります。トライオーバル型と呼ばれる3つのターンと3つのストレートから構成されていますが、一般的なトライオーバルとは異なり、それぞれのターンが異なる形状とバンク角を持つという特殊な設計となっています。そのため、Tricky Triangle（トリッキー・トライアングル）やBermuda Triangle（バミューダ・トライアングル）といった愛称で呼ばれ、ドライバーを悩ませる難攻不落のコースとして知られています。

ホームストレートはコース最長の3740フィート(約1140メートル)で、ストックカーでは最高速度200mph(約320km/h)以上、インディカーでは220mph(約350km/h)以上に達します。ターン1は14度のバンク角を持ち、最もタイトなコーナーです。これはかつて存在したトレントン・スピードウェイを模した設計とされています。ターン1を抜けると、2番目に長いロングポンド・ストレート(約931メートル)があり、その先に8度のバンク角を持つターン2があります。このターンは、トラック外とピット裏パドックを繋ぐトンネルがあることから、トンネルターンとも呼ばれています。さらに、短いストレート(約542メートル)を経て、6度のバンク角を持つターン3へと続きます。ターン3はミルウォーキー・マイルの旧レイアウトを模して設計されています。ターン4が存在しないため、アウト側のウォールには「WHAT TURN 4?」というマーキングが施されています。

このように、各ターンが異なる形状を持つことから、オーバル型のロードコースとも言われるほど、トリッキーなコースとなっています。長いストレートで加速し、ターンではアウトーインーアウトのライン取りが必要となるなど、ロードコースと共通点も多いです。しかし、バンク角が全体的に浅いため、ラインの自由度は少なく、NASCARでは縦長のレース展開になりやすく、スピンやクラッシュは比較的少ない傾向があります。そのため、ピット戦略の重要性は低く、ドライバーの実力差が結果に反映されやすい傾向にあります。

一方、インディカー・シリーズでは、過去に深刻な事故が複数発生しており、2015年のジャスティン・ウィルソン選手の死亡事故や2018年のロバート・ウィケンズ選手の負傷事故などが記憶に新しいです。2019年にはスタート直後に多重クラッシュが発生するなど、安全面への懸念が高まりました。これらの事故を踏まえ、2020年からはインディカー・シリーズの開催権がリッチモンド・インターナショナル・レースウェイに移行しています。

コース幅は非常に広く(ホームストレートで約22メートル)、走りやすいトラックではありますが、浅いバンク角が独特の難しさを生み出しています。NASCARでは、この特徴がピット戦略よりもドライバーのスキルを重視するレース展開を生み出し、インディカーではそのトリッキーさから、数々のドラマを生み出してきた歴史があります。

トラックレコードは、NASCARスプリントカップシリーズではデニー・ハムリン選手の181.415mph(約291.959km/h)が予選ラップレコード、インディカーシリーズではファン・パブロ・モントーヤ選手の223.920mph(約360.364km/h)が予選ラップレコードとして記録されています。これらの記録は、ポコノ・レースウェイの高速性と、ドライバーの限界に挑戦させるコースレイアウトを象徴しています。

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