ポストミニマリズム

ポストミニマリズムは、1971年に美術評論家のロバート・ピンカス＝ウィッテンによって提唱された芸術用語で、ミニマリズムの美学を基盤としつつ、それを発展・超越しようとする様々な芸術分野の作品を指します。特に視覚芸術と音楽の分野で顕著ですが、ミニマリズムを重要な参照点とするあらゆる分野に適用可能です。

視覚芸術におけるポストミニマリズム

視覚芸術におけるポストミニマリズムは、特定の運動というよりも芸術的な傾向を指します。ミニマリズムを美的、あるいは概念的な基準点として捉え、日常的な物品やシンプルな素材を用いて作品を制作します。時には形式主義的な美学を帯びることもありますが、ポストミニマリズムには非常に多様なアーティストが含まれており、その作風は多岐にわたります。したがって、全ての作品に共通する特徴を見出すことは困難です。

代表的な作家としてエヴァ・ヘスが挙げられます。彼女の作品にはミニマリズムのテーマである「グリッド」や「連続性」が見られますが、機械的な均一性よりも手作りによる不均一さを強調し、作品に人間的な要素を導入しています。また、リチャード・セラも重要なポストミニマリストの一人です。

音楽におけるポストミニマリズム

音楽における「ポストミニマリズム」は、ミニマル・ミュージックの影響を受けた作品を指し、アート・ミュージックのメタジャンルに分類されます。音楽評論家のカイル・ガンは、1980年代から1990年代にかけて隆盛した、より厳密な音楽スタイルを指す言葉としてこの用語を用いました。その特徴として、以下の点が挙げられます。

安定したパルス: 作品全体を通して、持続的なパルスが維持される。
ダイアトニックな音階: 調性音楽的でありながら、伝統的な機能和声理論は回避される。
均一なダイナミクス: 強烈なクライマックスや過度な感情表現は避けられる。
形式的な構造の回避: ミニマリズムに見られる明確な、あるいは直線的な構造は用いられない。

ポストミニマリズムでは、加算や減算などのミニマリズムの手法が用いられますが、より巧妙に隠蔽されていることが多いです。また、世界の様々な民族音楽やポピュラー音楽からの影響も取り込んでおり、その多様性が特徴です。例えば、バリのガムラン、ブルーグラス、ユダヤ教の詠唱などがその例です。

ミニマリズムから派生した音楽スタイルについては、「トータリズム」という用語も参照されることがあります。ポストミニマリズムは、ミニマリズムの単純さを引き継ぎつつ、より複雑で多様な表現を追求した音楽スタイルと言えるでしょう。

まとめ

ポストミニマリズムは、ミニマリズムの美学を基盤としつつ、より多様で複雑な表現を目指す芸術動向です。視覚芸術と音楽の両分野で独自の展開を見せており、その影響は現代アートの様々な領域に及んでいます。

参考資料

Minimal Music, Maximal Impact by Kyle Gann © 2001 NEWMUSIC USA
A Discography of Postminimal, Totalist, and Rare Minimalist Music by Kyle Gann
* MINUS SPACE reductive art

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