ポストン戦争強制収容センター

ポストン戦争強制収容センター

ポストン戦争強制収容センター（Poston War Relocation Center）は、第二次世界大戦中にアメリカ合衆国政府が設けた、日系アメリカ人を強制的に収容するための施設の一つです。アメリカ合衆国アリゾナ州西部のユマ郡（現在はラパズ郡の一部）に位置し、戦時転住局（War Relocation Authority - WRA）によって運営されました。日系人たちの間では、「保寿屯」と漢字で表記されることもありました。この施設は、大戦中の1942年から1945年にかけて機能し、最大で1万7,814人（1942年9月時点）もの人々が過酷な環境下での集団生活を強いられました。

施設の地理と構造

ポストン強制収容センターは、アリゾナ州の砂漠地帯、具体的にはコロラド川インディアン保護区内に建設されました。これは、インディアン事項事務局（Bureau of Indian Affairs）の協力のもと実現したものでした。施設の西方約4.8キロメートルには、コロラド川が流れています。

広大な敷地に設けられた収容所は、約4.8キロメートル（3マイル）の間隔を置いて配置された三つの区域（ユニット）から構成されていました。これらの区域は、その立地する砂漠の環境にちなんで、収容されていた人々によって「Roasten（ローステン、焼けるように暑い）」「Toastin（トーステン、こんがり焼ける）」「Dustin（ダスディン、砂埃がひどい）」と名付けられたと言われています。このユーモラスとも皮肉とも取れる命名は、当時の劣悪な生活環境を物語っています。

収容所での生活

ポストンでの収容生活は、自由を奪われただけでなく、物資不足や単調な労働に彩られたものでした。収容者たちは、外部との接触が制限された閉鎖的な環境の中で、様々な活動を通じてコミュニティを維持しようと努めました。

食料を確保するため、収容所内では農業や畜産が行われました。広大な砂漠を開墾し、作物を育て、家畜を飼育することは、食料の供給源となるだけでなく、収容者たちの生活に目的と秩序をもたらす一面もありました。また、施設の維持や運営のため、収容者たちは様々な仕事を割り当てられました。収容施設の建物の建設もその一つで、材木や、現地で入手可能な土を用いた日干しレンガが建材として使用されました。

厳しい環境の中でも、人々はレクリエーション活動も行いました。スポーツやボーイスカウトなどの活動は、特に若い世代にとって、収容所生活の厳しさから一時的に解放される機会となりました。これらの活動は、希望を失わないための精神的な支えでもあったと言えます。

著名な被収容者

ポストン強制収容センターには、後に各分野で著名となる多くの日系アメリカ人が収容されていました。彼らはこの困難な経験を乗り越え、戦後のアメリカ社会や芸術、文化、政治に大きな貢献をしました。以下にその一部を挙げます。

ドリス・マツイ: アメリカ合衆国下院議員
イサム・ノグチ: 国際的に知られる芸術家、彫刻家
ヒデオ・ササキ: 著名な造園家、ランドスケープアーキテクト
シンキチ・タジリ: 彫刻家
島田テル: 俳優
タク・フジモト: 映画監督
平山智: プロ野球選手
ヒサエ・ヤマモト: 作家
ワカコ・ヤマウチ: 劇作家、小説家
城戸三郎: 弁護士、日系アメリカ人市民同盟（JACL）の第7代会長

これらの人物が収容所内でどのような生活を送り、その経験がその後の人生にどう影響したかは、日系アメリカ人の強制収容の歴史を理解する上で重要な側面です。

ポストン戦争強制収容センターは、第二次世界大戦中のアメリカにおける日系アメリカ人に対する人権侵害の歴史を物語る、重要な場所の一つです。その存在は、戦時下の集団ヒステリーがいかに多くの人々の人生を狂わせたかを静かに問いかけています。

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