ポリス・ライヴ

The Police - Live!

1995年に満を持して発表された『ポリス・ライヴ』（原題：『Live!』）は、短くも濃密なキャリアを駆け抜けたザ・ポリスにとって、バンド名を冠した初の公式ライブアルバムとなりました。彼らの突然の活動停止から実に12年もの歳月を経て、ようやく公式なライブ音源がパッケージ化されたことは、世界中のファンにとって待望の出来事でした。この2枚組CDは、ポリスの歴史における二つの重要な時期のパフォーマンスを収めており、彼らの音楽性の変遷とライブバンドとしての凄みを鮮やかに描き出しています。

DISC 1: 初期衝動の記録 (1979年 ボストン)

DISC 1に収録されているのは、1979年11月27日にアメリカ、ボストンのオルフェウム・シアターで行われたライブの模様です。これは、彼らの最初の2枚のアルバム、『アウトランドス・ダムール』と『白いレガッタ』を発表した後の、バンドがまさに勢いに乗っていた時期のパフォーマンスです。初期の代表曲である「So Lonely」、「Truth Hits Everybody」、「Message in a Bottle」、そして世界的なブレイクのきっかけとなった「Roxanne」や「Can't Stand Losing You」などが演奏されています。これらの楽曲は、パンクのエネルギーとレゲエのリズムを融合させた彼ら独自のサウンドが確立されつつある頃のものであり、ライブではスタジオ盤以上の緊張感と、時に原曲を大きく上回る長尺なジャムや即興演奏が披露されています。トリオ編成ならではの緊密でありながらもスリリングなインタープレイは、バンドの持つ生々しい魅力を余すところなく伝えています。スチュワート・コープランド作の初期の楽曲「Fall Out」や、スティングとコープランドの共作「Peanuts」「Landlord」、アンディ・サマーズとスティングの共作「Be My Girl - Sally」といった、多様な作曲者クレジットを持つ楽曲が含まれている点も、この時期のバンドのあり方を反映しています。

DISC 2: 円熟期と最後の輝き (1983年 アトランタ)

一方、DISC 2に収められているのは、1983年11月13日および14日にジョージア州アトランタで開催された「シンクロニシティー・コンサート」からの音源です。このライブは、彼らの最終作にして商業的成功の頂点を極めたアルバム『シンクロニシティー』のリリースに伴うワールドツアーの一環として行われました。ここでは、「Synchronicity I」、「Synchronicity II」といったタイトル曲や、空前のヒットとなった「Every Breath You Take（見つめていたい）」、「Wrapped Around Your Finger」、「King of Pain」など、『シンクロニシティー』からの楽曲が中心に演奏されています。この時期のポリスは、サウンドプロダクションがより洗練され、スケール感が増しています。初期の荒々しさに代わり、圧倒的な演奏力に裏打ちされた緻密かつダイナミックなアンサンブルを聴くことができます。また、このDISC 2には、主要3人に加えて複数のバックグラウンド・ボーカルが参加しており、後期サウンドの特徴である重層的なコーラスワークがライブでも再現されています。このアトランタ公演の映像は、2005年に発売された『シンクロニシティー・コンサート』DVDにも収録されており、視覚的にもそのパフォーマンスを追体験することが可能です。

プレイヤーとプロダクション

ポリスの核を成すメンバーは、ベースとリード・ボーカルを担当するスティング、ギターのアンディ・サマーズ、そしてドラムスのスチュワート・コープランドの3人です。彼ら3人の個性がぶつかり合いながら生み出すサウンドこそが、ポリスの最大の魅力であり、『Live!』の全編を通してその妙技を堪能できます。特にスティングの変幻自在なベースライン、サマーズの空間的なギターサウンド、コープランドのポリリズミックなドラミングは、それぞれが唯一無二の輝きを放っています。

本作のプロデュースはアンディ・サマーズが手掛け、バンド自身と彼らのマネージャーであるマイルズ・コープランドがエグゼクティブ・プロデューサーを務めました。エンジニアリングはWolfgang AmadeusとEddie Kingが担当しています。

まとめ

『ポリス・ライヴ』は、ポリスというバンドが短い活動期間の中でどのように進化を遂げたのかを、ライブパフォーマンスという最も生々しい形で示す貴重な資料です。初期の爆発的なエネルギーと後期の洗練されたサウンド、その両方を味わえるこのアルバムは、彼らの音楽性の幅広さと、時代を超えてリスナーを惹きつけるライブバンドとしての実力を証明しています。ポリスのファンはもちろんのこと、優れたロックバンドのライブ演奏に触れたい音楽ファンにとっても、必聴の一枚と言えるでしょう。

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