アウトランドス・ダムール

アウトランドス・ダムール (Outlandos d'Amour)

アルバム概要と制作背景

『アウトランドス・ダムール』は、イギリスの革新的なスリーピース・バンド、ポリスの記念すべきデビュー・アルバムです。1978年11月2日にA&Mレコードよりリリースされました。彼らが世界的な成功を収める第一歩となった本作には、「ロクサーヌ」や「キャント・スタンド・ルージング・ユー」といった、バンドの初期を代表するヒットシングルが収録されています。

本作の制作は、当時主にライブ活動に重点を置いていたポリスにとって初めての本格的なレコーディング経験でした。アルバムは、医師でありスタジオ所有者でもあったナイシェル・グレイのサリー・サウンド・スタジオで録音されました。レコーディング作業はわずか10日間という短期間で完了し、費用も1500ポンド未満という低予算で行われました。これらの制約が、結果としてバンドの持つエネルギッシュで生のサウンドを捉えることにつながったとも言えます。楽曲の大部分は、リードボーカルとベースを担当するスティングが制作しました。

リリースへの道のりとタイトル名の由来

当初、『アウトランドス・ダムール』はインディーズ・レーベルからのリリースが予定されていました。しかし、後にポリスのマネージャーとなるマイルズ・コープランド（ドラマー、スチュワート・コープランドの兄）が収録曲の一つである「ロクサーヌ」を聴き、そのポテンシャルを見抜き、A&Mレコードからの発売へと繋がりました。

アルバムから先行してシングルカットされた「ロクサーヌ」は、リリース当初はチャートでの大きな成功を収めるには至りませんでした。そのため、アルバム本体は「キャント・スタンド・ルージング・ユー」との両A面シングルと同時期に発売される形となりました。

アルバムのタイトルは、当初『ポリス・ブルータリティー（Police Brutality）』という仮題と、警官に扮したメンバーが女性を尋問するジャケット案がありました。しかし、最終的には「無法者 (outlaws)」「特殊部隊員 (commandos)」といった単語からの造語である「アウトランズ (Outlandos)」と、フランス語で「愛の (d'amour)」を組み合わせた『アウトランドス・ダムール』に変更されました。

収録曲

アルバムには、以下の全10曲が収録されています。スティングが多くの楽曲を手がけていますが、他のメンバーも作曲に参加しています。

ネクスト・トゥ・ユー (Next to You) - (Sting) - 4:44
ソー・ロンリー (So Lonely) - (Sting) - 4:49
ロクサーヌ (Roxanne) - (Sting) - 3:12
ホール・イン・マイ・ライフ (Hole in My Life) - (Sting) - 4:52
ピーナッツ (Peanuts) - (Copeland,Sting) - 3:58
キャント・スタンド・ルージング・ユー (Can't Stand Losing You) - (Sting) - 2:58
トゥルース・ヒッツ・エヴリバディ (Truth Hits Everybody) - (Sting) - 2:53
俺達の世界 (Born in the 50's) - (Sting) - 3:40
サリーは恋人 (Be My Girl - Sally) - (Sting,Summers) - 3:22
マソコ・タンガ (Masoko Tanga) - (Sting) - 5:40

これらの楽曲は、パンク、レゲエ、ニュー・ウェーブといった多様な音楽ジャンルの要素を融合させた、ユニークなサウンドを展開しています。

評価とリリース当時の反応

『アウトランドス・ダムール』は、時を経てその評価を確固たるものにしています。『ローリング・ストーン』誌が選出する「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」では、2003年版で434位、改定版では428位にランクインしています。また、同誌の「オールタイム・ベスト・デビュー・アルバム100」においても38位に選ばれており、デビュー作として非常に高い評価を受けています。

しかし、リリース当時は必ずしも順風満帆ではありませんでした。特にシングル曲「ロクサーヌ」と「キャント・スタンド・ルージング・ユー」は、その歌詞の内容を巡って物議を醸しました。「ロクサーヌ」は売春をテーマに、「キャント・スタンド・ルージング・ユー」は自殺を示唆する内容が含まれているとされ、イギリスの公共放送局であるBBCは、これらの楽曲のラジオ放送を拒否しました。

日本盤の特徴

2005年に日本国内で再リリースされたリマスター盤や紙ジャケット仕様のCDには、特別な要素が加えられました。これらはエンハンスドCDとして制作され、CD-ROM領域には「ロクサーヌ」のプロモーションビデオが収録されています。

『アウトランドス・ダムール』は、ポリスの音楽的ルーツと実験精神が凝縮された作品であり、その後の彼らの成功の礎を築いたデビュー・アルバムとして、今なお多くの音楽ファンに聴き継がれています。

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