ポリプ

ポリプとは

ポリプ（polyp）は、刺胞動物に見られる基本的な体の構造の一つで、イソギンチャクのように基質に固着して生活し、触手を広げるのが特徴です。刺胞動物は放射相称の体を持ち、袋状の消化管を持つことが共通の特徴です。ポリプは、クラゲと並ぶ刺胞動物の主要な形態であり、多くの種で生活環の一部を占めています。

形態

ポリプは、基質に定着した生活に適応した形態をしています。体は円筒形が基本ですが、細長いもの、平たいもの、円錐形に近いものなど、多様な形が見られます。円筒形の一端には口盤があり、その周囲には多数の触手が配置されています。口盤には口触手を持つものもいます。反対側は基質への付着部であり、イソギンチャクでは足盤として機能し、ゆっくりとした移動も可能です。しかし、多くのポリプは骨格や根のような構造で固定され、移動できません。内部は消化管で、ヒドロ虫類では単純な袋状ですが、他のグループでは隔壁と呼ばれる壁が胃腔を仕切っています。隔壁の数は分類群によって異なり、花虫類では多く、鉢虫類では少ないのが特徴です。また、殻や鞘を持つものもいます。

生活

ポリプは固着生活に適していますが、完全に動けないものばかりではありません。イソギンチャクは足盤を使って移動できますし、ヒドラは口を使って移動することもあります。オヨギイソギンチャクのように浮遊生活をするものもいます。また、カニやヤドカリと共生するポリプも知られており、移動能力を得たり、防御に役立てたりしています。ハナギンチャクのように巣穴の中で生活するタイプも存在します。浮遊性のポリプの例もあり、ギンカクラゲは浮きを持つ群体性のポリプと考えられています。

生活環との関連

刺胞動物は、ポリプのみを持つもの、ポリプとクラゲの両方を持つもの、クラゲのみを持つものがあります。ポリプのみを持つものでは、ポリプ自身が生殖腺を持ちますが、クラゲを持つものではクラゲに生殖腺ができます。ポリプは多くの場合、無性生殖で増えます。無性生殖の方法には、縦分裂、横分裂、出芽などがあり、増殖した個体が繋がって群体を形成することもあります。ポリプからクラゲが形成されるのも無性生殖の一種です。ヒドロ虫類では出芽、鉢虫類では分裂によりクラゲが形成されます。

分類群との関連

• - 花虫綱: すべてポリプのみで、生殖巣もポリプにあります。群体性のものが多いですが、単体のものも多く、大型になるものもいます。
• - 鉢虫綱: クラゲが成体で、ポリプは幼生時のみです。通常は単体で、無性生殖で増えます。
• - ヒドロ虫類: クラゲとポリプの両方が見られ、どちらかが大きく発達するものや、どちらかがほとんど見られないものまであります。ポリプは群体性のものが多いですが、単体で大型になるものもいます。ヒドロ虫類のポリプは特にヒドロ花と呼ばれることもあります。群体性のポリプでは、栄養個虫や生殖個虫など、個体の形態が分化している場合があります。

系統の問題

ポリプは刺胞動物の基本的な体制であり、その構造は分類群によって異なります。花虫類のポリプは構造が複雑ですが、ヒドロ虫類のポリプは単純です。一見すると放射相称に見えるものの、細部を見ると左右対称性が見られるものもあります。刺胞の多様性を見ると、ヒドロ虫類の方が高度な分化を遂げていることがわかります。このため、刺胞動物の系統については議論が続いています。古典的な説では、ヒドロ虫類が原始的で、花虫類が進化したとされていましたが、ハッジは、花虫類が祖先の形質を残している可能性を指摘し、多細胞動物の進化に関する新しい説を提唱しました。彼は、刺胞動物が固着生活に適応するために放射相称性を獲得し、構造が単純化する方向に進化したと考えました。

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