ポルシェ・550

ポルシェ550：伝説のレーシングマシンとその系譜

ポルシェ550は、1954年にデビューしたポルシェのスポーツレーシングカーです。その軽量な車体とパワフルなエンジン、そして数々のレースでの輝かしい戦績によって、モータースポーツ史に名を刻む名車となりました。本稿では、550とその派生モデルである550スパイダー、550/1500RS、550A/1500RSについて、詳細に解説します。

550スパイダー：軽量化と高性能エンジンの融合

550スパイダーの開発は、ウォルター・グルックナーが1950年のドイツ国内選手権で356を改良した「グルックナー・ポルシェ」で優勝した経験に端を発します。当初は4カムシャフトエンジンを搭載する予定でしたが、開発の遅れから、1,498ccのOHVフラット4エンジンを搭載することになりました。それでも、軽量なアルミボディと太い鋼管フレームによって、車両重量はわずか590kgに抑えられました。この軽量化と、110馬力のエンジンにより、最高速度220km/h、0-100km/h加速10秒以内という高い性能を達成しました。サスペンションは前トレーリングアーム式、後スイングアクスル式、ブレーキはドラム式と、当時のレーシングカーとしては一般的な構成でした。1953年のル・マン24時間レースではクラス優勝を果たすなど、早くからその実力を示しました。

550/1500RS：さらなる高性能化と生産

550/1500RSは、ヴェンドラーによるコーチワークが施され、1954年末から市販が開始されました。車名は、乾燥重量が約550kgであることに由来しています。エルンスト・フールマンによる高度なチューニングが施された547/1型エンジンは、最高出力135馬力、最大トルク14.8kgmを発生しました。この高い性能により、ミッレミリアやル・マン24時間レースでクラス優勝、さらにはル・マン24時間レースで総合4位を獲得するなど、数々のレースで活躍しました。最終的には100台以上が生産されました。

550A/1500RS：改良と軽量化によるさらなる進化

1955年末に登場した550A/1500RSは、550/1500RSをさらに改良したモデルです。スイングアクスルのピボット位置を低く変更し、フロントスタビライザーを追加することで足回りを改良。また、細い鋼管フレームを採用することで軽量化を図りました。エンジンは135馬力エンジンを搭載し、電装系も12Vに変更されました。外観上は、運転席後方に渦流防止のカバーが追加されました。生産台数は37台と少なく、希少価値の高いモデルです。1956年のミッレミリアでは総合優勝を果たすなど、その高いポテンシャルを改めて証明しました。ニュルブルクリンク1000kmでも4位入賞、ル・マン24時間レースでは総合5位、クラス優勝と、高い競争力を維持していました。

ジェームズ・ディーンとポルシェ550

1955年、アメリカに輸出された550のうち1台をハリウッド俳優のジェームズ・ディーンが購入しました。しかし、彼はわずか1ヶ月後の同年9月30日に交通事故で亡くなってしまいました。この事故は、ジェームズ・ディーンの悲劇的な最期と、ポルシェ550という伝説的なレーシングカーの物語に、さらに深い悲しみとロマンを刻み込むこととなりました。

参考文献

小林彰太郎『世界の自動車-5 ポルシェ』二玄社
『ワールドカーガイド1ポルシェ』ネコ・パブリッシング
『われらがポルシェ ポルシェなんでも事典』講談社
ポルシェ博物館/松田コレクション資料

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