ポルターヴァ連隊

ポルターヴァ連隊

ポルターヴァ連隊（ウクライナ語: Полтавський полк）は、17世紀半ばから18世紀末にかけて、現在のウクライナ左岸地方に置かれていた、コサックが組織した独自の軍事・行政単位です。これは、当時この地に存在したコサック国家、通称「ヘーチマンシチナ」を構成する主要な要素の一つであり、「ポルターヴァ連隊区」と呼ばれることもありました。連隊の中心地、すなわちその行政庁は、連隊名の由来ともなったポルターヴァの町に置かれていました。この町は、連隊がロシア帝国によって解体される1775年まで、その活動拠点であり続けました。

ポルターヴァ連隊は、単なる軍事組織ではなく、その管轄区域内において広範な行政機能を担っていました。地域の防衛、治安維持といった軍事的な役割に加え、住民からの徴税、裁判の実施、さらには地域社会の維持・管理といった行政サービスの提供も行っていました。このような軍事と行政を兼ね備えた体制は、ヘーチマンシチナにおけるコサックの自治の根幹をなすものでした。

連隊の内部組織は、「百人隊」（ソートニャ、ウクライナ語: сотня）と呼ばれる下部単位で構成されていました。この百人隊の数は、時代によって変動があり、記録によると13から16の間で推移していたことが分かっています。各百人隊もまた、その管轄区域内において軍事・行政機能を持ち、連隊全体を支える基盤となっていました。

ポルターヴァ連隊の歴史は、その形成期において他のコサック組織との関係の中で展開しました。特に注目されるのは、1649年に隣接するハーデャチ連隊を一時的に合併したことです。これにより、ポルターヴァ連隊はその規模と影響力を拡大させましたが、この統合は永続的なものではありませんでした。わずか12年後の1661年には、地域的な区分や政治的背景の変化により、旧ハーデャチ連隊の一部がジニキーウ連隊として分離し、残りが改めてポルターヴァ連隊として再編成されました。

また、ポルターヴァ連隊は、その存在期間の大部分において、ヘーチマンシチナの政治において独特な立場を占めていました。当時のヘーチマン政権、すなわちコサック国家の中央権力に対して、しばしば批判的な姿勢をとる勢力や、いわゆるコサック内部の「野党」の根拠地として機能したのです。これは、連隊が単に上からの命令を実行するだけでなく、地域コサックの利益や意見を代表し、時には中央権力に抵抗するだけの力を持っていたことを示唆しています。ポルターヴァという地理的な位置や、地域のコサックの構成・気質などが、このような政治的立場を生み出した要因と考えられます。

しかし、18世紀後半になると、ヘーチマンシチナの自治権は、東方の大国であるロシア帝国によって次第に制限されていきます。帝国の中央集権化政策が進む中で、コサックの伝統的な組織体制は解体の危機に瀕しました。そして、ついに1775年、エカチェリーナ2世による大規模な行政改革の一環として、ポルターヴァ連隊は正式に廃止されました。連隊が管轄していた領域は、ロシア帝国の新たな行政区分であるキ新ロシア県の一部となり、ポルターヴァ郡として再編されました。これは、およそ1世紀半にわたってこの地で独自の軍事・行政、そして政治的役割を果たしてきたポルターヴァ連隊の歴史の終焉であり、ウクライナ・コサックの自治の喪失を象徴する出来事の一つでした。

このように、ポルターヴァ連隊は、ヘーチマンシチナという特殊な国家体制の下で、地域の軍事・行政を担い、時には中央政治にも影響を与えた重要な歴史的単位でした。その盛衰は、コサック国家自体の運命と深く結びついています。

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