ポルトガルの国章

ポルトガルの国章：歴史と象徴

ポルトガルの国章は、1911年6月30日、共和国旗とともに正式に採用されました。そのデザインは、中世以来のポルトガル王国の紋章を起源とし、数々の歴史的出来事や象徴を巧みに織り交ぜています。

国章のデザインと歴史的変遷

国章の起源は、ポルトゥカーレ伯爵エンリケの紋章に遡ります。白地に青い十字を描いたこの紋章は、ブルゴーニュ家の紋章を基調としていました。彼の息子、初代ポルトガル王アフォンソ1世は、この紋章に改良を加えました。青い十字に加え、盾形に並べられた11個ずつの白いコインを5つ追加したのです。これらのコインは王の財産、つまり王権を表し、5という数はオーリッケの戦いでアフォンソ1世が打ち破った5人のムーア人の王を象徴していると言われています。

アフォンソ1世の息子、サンシュ1世は、青い十字を取り除き、代わりにコインを含んだ盾を十字状に5つ配置した紋章を採用しました。コインの数はその後も変動しましたが、最終的には5つに落ち着きました。

アフォンソ3世の時代には、赤地と金色の城が加えられました。これはレコンキスタ（国土回復運動）においてムーア人から奪還した城を表しており、最終的に7つの城が描かれるようになりました。スペインの国章にも城が描かれていますが、ポルトガル国章の城の門は金色である点が異なります。

15世紀以降、ポルトガルの植民地の旗には天球儀が頻繁に使用されました。これは、大航海時代におけるポルトガルの海外進出と、世界中に広がるポルトガル海上帝国の繁栄を象徴しています。天球儀は航海の際に不可欠な道具であり、ポルトガルの海洋進出と世界的な影響力の拡大を象徴的に表現しています。

国章の下部に描かれた緑と赤は、共和政を象徴する色です。

各要素の象徴的意味

青い十字: ブルゴーニュ家からの継承を示す。
白いコイン: 王権と富の象徴。
5つの盾(コイン): オーリッケの戦いで打ち破られた5人のムーア人の王を表す。
7つの城: レコンキスタで奪還した城を表す。
天球儀: ポルトガルの海洋進出と世界的な影響力の象徴。
緑と赤: 共和政の象徴。

まとめ

ポルトガルの国章は、単なる紋章ではなく、ポルトガル国家の歴史、文化、そして偉業を凝縮した象徴です。中世からの伝統を受け継ぎながら、大航海時代における偉大な功績や共和政への移行といった歴史的転換期も反映されています。各要素が持つ意味を理解することで、ポルトガルの歴史とアイデンティティに対する深い理解を深めることができます。

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