ポロネーズ

ポロネーズ：ポーランドから世界へ広がった優雅な舞曲

ポロネーズは、フランス語で「ポーランド風」を意味する言葉で、マズルカと並んでポーランドを代表する舞曲です。ゆったりとした4分の3拍子が特徴的で、荘重な雰囲気を醸し出します。その起源は古く、16世紀後半のポーランド王国宮廷にまで遡るとされています。当初は貴族の行進として始まり、やがてヨーロッパ各地の宮廷へと広がり、一つの舞踊様式として確立していきました。

ポロネーズの特徴は、その独特のリズムにあります。典型的なポロネーズは、重厚な4分の3拍子で、第1拍が16分音符で細かく刻まれているのが特徴です。ただし、初期のポロネーズは必ずしもこのリズムに従っておらず、2拍子のものも存在していました。私たちが現在耳にするようなリズムが定着したのは、古典派の時代になってからです。また、ダンスは3拍目の最後に挨拶で締めくくられるため、3拍目の最初の拍（弱拍）で終結するのが一般的です。この特徴は、女性終止と呼ばれています。

ポロネーズは、単なる宮廷舞踊にとどまらず、純器楽曲としても数多くの作曲家によって取り上げられました。初期バロック音楽では、J.S.バッハがブランデンブルク協奏曲やフランス組曲、管弦楽組曲などでポロネーズを取り入れています。また、ヘンデルも合奏協奏曲集作品6の3の第4曲でポロネーズを用いています。さらに、古典派、ロマン派へと時代が移り変わるにつれて、モーツァルト、ベートーヴェン、ウェーバー、シューベルトといった巨匠たちもポロネーズに魅せられ、数々の作品を残しました。中には、舞曲ではないものの「ポロネーズ風」（伊: alla polacca）という表記でポロネーズ風の楽曲を作曲した例も多く見られます。ベートーヴェンの三重協奏曲の終楽章などがその例です。

ポーランド国内では、ユゼフ・コズウォフスキ、ミハウ・クレオファス・オギンスキ、カロル・クルピンスキといった作曲家が、民族色豊かなポロネーズを生み出しました。彼らの作品は、後にショパンに大きな影響を与えたと言われています。ショパン自身も、『ポロネーズ第6番「英雄ポロネーズ」』や『ポロネーズ第3番「軍隊ポロネーズ」』など、数々の名高いポロネーズを残し、ポロネーズを世界的な名曲へと押し上げました。ショパン以降も、ユリウシュ・ザレンプスキやアレクサンデル・ザジツキといったポーランドの作曲家たちが、大規模なポロネーズを作曲し続けています。さらに、ポーランド国外でも、リストやチャイコフスキーといった作曲家がポロネーズに新たな魅力を与えました。

アメリカ合衆国においても、ポロネーズは特別な存在感を持ちます。1885年、チェスター・A・アーサー大統領は、大統領就任式典の音楽を刷新しようと、ジョン・フィリップ・スーザに新しい楽曲の作曲を依頼しました。スーザは翌年『大統領ポロネーズ』を完成させましたが、アーサー大統領は残念ながら初演の前に亡くなってしまいました。

このように、ポロネーズは長い歴史の中で、宮廷舞踊から純粋な音楽作品へと進化を遂げ、多くの作曲家によって愛され、演奏され続けてきました。そして2023年には、その歴史と文化的な価値が認められ、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。ポロネーズは、これからも世界中の人々にその優雅さと魅力を伝え続けることでしょう。

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