ポンバル侯爵セバスティアン・デ・カルヴァーリョ

セバスティアン・ジョゼ・デ・カルヴァーリョ・イ・メロ

セバスティアン・ジョゼ・デ・カルヴァーリョ・イ・メロ（1699年5月13日 - 1782年5月8日）は、ポルトガル王国の著名な政治家で、国王ジョゼ1世の信任を受けて独裁的な権力を握りました。彼は啓蒙主義に基づいた改革を進め、ポルトガルの経済と社会に顕著な影響を与えました。彼の政治的キャリアは、リスボンの小貴族の家に生まれ、国際的な外交経験を積んだ後に始まりました。カルヴァーリョは商業政策、財政改革、そして社会の構造的変革に挑戦し続けました。

早期の経歴と外交官の役割

カルヴァーリョはリスボンで小貴族の家庭に生まれ、コインブラ大学での学びを経て少しの間軍務に就いた後、1738年にはロンドン駐在のポルトガル大使として任命されました。1745年にはウィーンに転任し、そこでオーストリアの王妃マリア・アナと深い関係を築きました。しかし、国王ジョアン5世に嫌われたため、彼は1749年に召喚されました。しかし、ジョアン5世の死後、新王ジョゼ1世はカルヴァーリョを重用し、彼を外務大臣に任命しました。その後、カルヴァーリョはヨーロッパ各国の影響を受けながら、ポルトガルの政治にその理念を活かすことに成功しました。

啓蒙主義による改革

1755年に宰相に就任したカルヴァーリョは、産業革命の影響をうけ、英国の経済成功に感銘を受けました。彼はポルトガルでも同様の経済政策を導入し、商業評議会を設立、様々な改革を進めました。国の財政を強化し、工業化を促進するための政策が取られました。この時代の重要な一歩として、ポルトガル植民地の奴隷制が廃止され、軍隊の再編成やコインブラ大学の改革も行なわれました。カルヴァーリョの取り組みは、ブルジョアジーの地位を向上させる結果となり、ポンバル改革と呼ばれる一連の政策を生み出しました。

リスボン大地震と再建

1755年11月1日、リスボンで発生した大地震は、都市に壊滅的な影響を及ぼしました。カルヴァーリョは生き残り、直ちに市の再建に取り掛かります。彼の指導のもと、遺体の水葬や瓦礫の撤去が行なわれ、リスボンは計画的に再建されました。このプロジェクトは「バイシャ・ポンバリーナ」として知られる新しい街区を生むことになり、建築様式はポンバル様式として後世に名を残すことになります。

専制支配とその反発

再建の成功を得たことで、カルヴァーリョはジョゼ1世からさらなる権限を与えられ、独裁的な支配を強化します。しかし、この権力の集中は貴族たちの反発を招き、1758年にはジョゼ1世を暗殺しようとした事件が発生しました。カルヴァーリョは反乱を理由に大規模な弾圧に踏み切り、多数の貴族が処刑や投獄、追放される事態となります。このような恐怖政治は、彼自身の支持基盤に影響を与え、ポルトガル社会の分断を深める結果につながりました。

経済政策の展開

カルヴァーリョの商業政策は、ポルトガルの植民地から生み出される富を独占する形で展開され、国王の支持者たちによって運営される形となりました。イギリス商人に対する規制を強化し、イエズス会の資産を没収する政策を推進するなど、清貧主義を掲げた経済運営を行いました。しかし、彼の政策はブラジルの独立意識を高め、そして奴隷制度の廃止が進められる環境を生み出しました。

最後の日々と影響

1770年にはポンバル侯爵として叙任されますが、1777年に新しい女王マリア1世が即位すると、彼の権力は脅かされます。カルヴァーリョは彼女から解任され、田舎の荘園に身を潜めることを余儀なくされました。1782年に彼はその場所で静かに死去し、ポルトガルの歴史において重要な人物としてその名前は記憶されています。今日でもリスボンには彼にちなんだ広場や地下鉄駅があり、彼の影響力を物語る存在となっています。彼の改革は、ポルトガルの歴史における転機として多くの人に語り継がれています。

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