ポンポン桂

ポンポン桂：桂馬を捨てて飛車先を突破する急戦

ポンポン桂は、将棋における対四間飛車急戦の一つです。その名の通り、▲4五桂と桂馬を歩頭に捨てる大胆な仕掛けが特徴で、富沢幹雄九段が好んで用いたことから「富沢キック」とも呼ばれています。古典定跡に数えられるこの戦法は、桂馬の損失を承知の上で飛車先を突破し、優勢を築くことを目指します。

戦法の概要

ポンポン桂の核心は、▲4五桂という桂馬の犠牲を伴う攻めです。この仕掛けは、後手の陣形が△4一飛型や△1五角と角で桂馬を取れる形でない場合に有効です。後手が△4五同歩と桂馬を取ると、▲3三角成△同桂▲2四歩と続き、先手は桂馬を失うものの飛車先を突破します。

この戦法が成立する条件として、後手の陣形が重要です。例えば、△3二銀型では▲3三角成に△同銀と飛車先を受けながら桂馬を取り返すことができるため、ポンポン桂は成立しません。効果的なのは、後手の陣形が4三銀型の場合です。

△1五角を防ぐためには、事前に▲1六歩と突いておくか、後手が6四歩-5三歩型で6四の歩が浮いている場合は▲5五角と角を繰り出すことで対応できます。▲5五角は、後手が6四の歩取りをどのようにしても振り飛車の囲いに弱点を作ることが多く、3七の地点を防備できるため有効です。ただし、▲5五角に△6二飛と対応できる場合は、この手順は成立しません。

5五の角は、▲4六角と引いて▲2四歩を狙うという別の展開も可能にします。1991年の王座戦、富沢幹雄対藤井猛戦では、この手順が用いられ、先手の勝利に繋がっています。

振り飛車の対応策

振り飛車側は、ポンポン桂に対して様々な対応策を取ることができます。▲3七桂に対しては、△3二銀、△5四銀、△4一飛、△3二飛など、▲4五桂に備える手が考えられます。

△3二銀に対しては、5七に駒がない場合、▲6六角として▲5七角-▲2四歩と見せ、△4三銀を誘ってから打開する戦略があります。△5四銀には、▲2六飛-▲3五歩△同歩▲4六銀または桂馬が予め3七に跳ねているので▲4六銀～▲3五歩も成立するなど、角頭攻めにシフトできます。この筋は、△3二銀、△4一飛に対しても応用可能です。また、△3二飛には、▲4六歩-▲4五歩の仕掛けを狙うこともできます。

1982年の王座戦決勝では、内藤国雄九段が大山康晴十五世名人に勝利していますが、この時、内藤九段はポンポン桂模様から振り飛車の動きを見てうまくシフトして指し回していました。

ポンポン桂は、桂馬を損するものの、その代償として飛車先を突破するという戦法です。角交換によって3三に跳ばせた桂馬を捌かれる展開は避けたいので、4五で駒がぶつかる展開を避けるために▲4六歩を突かないことが重要です。4五歩からの仕掛けと違って4筋からの振り飛車反撃が利かないというメリットがあります。

振り飛車からの反撃策は、居飛車・振り飛車側の陣形によって様々です。右銀を5七に活用する形では▲2四歩に対して△6四角と打つ筋が有力で、それ以外には2四に飛車がいるタイミングで△4六歩と突き▲同銀△4五桂から△3三角を含みにする指し方もあります。△5四銀と活用できる場合は△6五銀～△7六銀～△7五桂を狙う指し方もあります。

その他の局面と藤井システム対策

第4図のような速攻例では、美濃囲いに対して▲3五歩△同歩▲4五桂と仕掛けます。この図では7七角-4八銀型ですが、8八角-5七銀型でもほぼ同様です。

近年注目されている藤井システム対策としても、ポンポン桂は有効です。藤井システムは居玉で構えているため、▲3六歩-▲3七桂が△6二玉-△7一玉と見合いになる可能性が高く、通常よりもこの急戦がやりやすいという利点があります(振り飛車の玉が8二に入城できない)。

参考文献

豊川孝弘 『パワーアップ戦法塾』 日本放送出版協会 2004年
杉本昌隆 『杉本昌隆の振り飛車破り』 毎日コミュニケーションズ 2007年

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