ポートランドにおける日本人の歴史

オレゴン州ポートランドとその周辺地域における日本人および日系アメリカ人の歴史は、19世紀初頭にまで遡ります。この地域への大規模な移民は1890年代に始まり、太平洋岸北西部の林業や鉄道産業の発展に伴い、労働力不足を補うために多くの日本人が渡米しました。これは、1882年の中国人排斥法による中国からの労働者の流入制限を受けたものでした。

黎明期

オレゴン州に最初に渡った日本人として記録されているのは、1834年に日本の米輸送船が難破し、3人の生存者がオレゴンに漂着した出来事です。そのうちの一人である鈴木金蔵は、数ヶ月間バンクーバー（当時オレゴン州の一部）に滞在しました。彼らはその後、ロンドンを経由してアジアに戻りました。

オレゴン州での最初の日系アメリカ人

ポートランドに永住した最初の日系人は、1880年に家族と共にこの地域に移住した岩越ミヨでした。彼女はスコットランド出身のアンドリュー・マッケノン大尉の妻でした。家族はすぐに製材所を設立し、その周辺は後にオレゴン州オリエントとして知られるようになりました。ミヨの娘であるジュエル・マッキノンは、1889年に実業家の高木真太郎と結婚し、オレゴンで初めての日本風の結婚式を挙げました。高木は輸入業を営み、その収益でミヨはポートランドの日本人コミュニティの重要な中心となるレストランを開きました。ミヨは1931年に亡くなり、記念碑として杉の木が植えられました。

コミュニティの成長

1890年代後半から、ポートランドへの大規模な日本人移民が始まりました。彼らは鉄道、農業、林業などの分野で働き、主に10代後半から20代前半の独身男性が多かった。1882年の中国人排斥法による労働力不足に対応するためのものでした。これらの日本人労働者がポートランドを通過するようになると、ホテル、浴場、ランドリー、食料品店などのサービス業の需要が高まり、ウィラメット川沿いの低家賃地域に日本人コミュニティが形成されました。

ポートランドには、2つの日本人街が形成されました。一つはノースウェスト・ポートランドのオールドタウン・チャイナタウンエリア、もう一つはサウスウェスト・ポートランドです。第二次世界大戦前、ノースウェスト地区の日本人街はオレゴン州最大の日本人街であり、100以上の企業が存在しました。フッドリバー渓谷には2番目に大きな日系コミュニティがありました。ポートランドの日本人街には、仕立て屋、レストラン、理髪店、ランドリー、銭湯、食料品店、ギフトショップ、転送会社、医師、歯科医、新聞社、雑貨店、菓子屋、撞球場、ガレージ、写真館、大工、タイヤショップ、ドラッグストア、宝石店など、多様な業種が集まっていました。また、日本語学校も運営されており、特にカテイ学園が有名でした。

反日感情と法律

1907年の日米紳士協定により、日本人労働者の移民は制限されましたが、すでに米国にいる移民の配偶者や子供の移民は許可されました。1924年の移民法は、市民権を得る資格のない外国人の米国への入国を完全に禁止しました。この時期、オレゴンではクー・クラックス・クランのような人種差別主義的な組織が勢力を増し、人種差別的な法律が制定されました。特に、1923年に可決された外国人土地法は、アジア系移民が土地を所有することを事実上禁止しました。これを回避するために、多くの一世は二世の子供たちの名義で土地を所有しました。1925年には、トレド近くで日本人製材所の労働者が強制的に追い出される事件が発生しました。この事件は後に民事訴訟で日本人労働者に有利な判決をもたらし、米国における初期の公民権判決の一つとなりました。

第二次世界大戦

1942年、真珠湾攻撃後、ルーズベルト大統領は大統領令9066号を発令し、アメリカ西海岸に住むすべての日系アメリカ人を内陸の強制収容所に収容しました。ポートランド地域からは3600人以上が、まずポートランド・アセンブリセンターに収容され、その後、アイダホ州のミニドカ移転センターなどに送られました。一部の日系アメリカ人は、農業労働者として働くために一時的に収容所を離れることが許可されました。

収容所の閉鎖後、ポートランドに戻った日系人は、かつて賑わっていた日本人街がなくなっていることに気づきました。

経済と日本庭園

ポートランドには、1911年創業の米国最古の豆腐店である太田豆腐があります。また、1998年には、スーパーマーケットチェーンの宇和島屋がビーバートンにオレゴン州初の店舗をオープンしました。ポートランド日本庭園は、北米にある約300の日本庭園の中で常に上位にランクされており、2013年には第1位に選ばれました。

ポートランドには、アフリ、ビハインド・ザ・ミュージアムカフェ、琵琶、ボクサーラーメン、ニンブルフィッシュ、サブロズなどの日本食レストランがあります。また、金星ラーメンは、2021年までまるきんラーメンとして運営されていました。

モニュメントとパブリックアート

トム・マッコール・ウォーターフロント・パークには、ジャパニーズアメリカン・ヒストリカルプラザがあります。同じくウォーターフロントパーク沿いには、ポートランドと札幌の姉妹都市関係を記念したフレンドシップサークルがあります。また、フェスティバルランタンとボイシズオブリメンブランスも、ポートランドの日系アメリカ人の歴史を記念するものです。オレゴンコンベンションセンターの外には、アイヌとネイティブアメリカンのパワーボードが設置されています。

宗教

1893年、川辺定吉はポートランド日本メソジスト教会を設立し、現在はエプワース合同メソジスト教会として運営されています。1903年には、若林祥瑞が初代僧侶としてオレゴン仏教教会を設立しました。この教会は後にオレゴン仏教寺院となり、3720 SE 34th Avenueに現在の場所を定めました。

地理的分布

2010年時点で、約3万人の日系アメリカ人がポートランドに居住しており、マルトノマ郡全体では約3万8千人が居住しています。

参考文献

オレゴンの日系アメリカ人（エッセイ）、オレゴン百科事典

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