ポーランドの民族衣装
ポーランドの民族衣装は、祭礼や民族舞踊で着用される、地域ごとの特色を色濃く残した伝統的な衣服です。東西ヨーロッパの中継点という地理的条件と、多民族国家としての歴史が、各時代の衣装に多様な影響を与えました。現在広く知られている民族衣装は、19世紀に民族意識の高まりと工業化によって形作られたものです。
ポメラニア地方
バルト海に面したポメラニア地方は、カシュプ人が多く居住し、漁業が盛んでした。漁師たちは、魚油や松脂を染み込ませた長靴と毛皮のフードを着用していました。女性は、亜麻のブラウスに青いウールのスカートという質素な服装でしたが、修道女から伝えられた金糸刺繍のビロードの頭飾りを身に着けていました。現在では、カシュプ刺繍以外はほとんど残っておらず、地方合唱団などでわずかに再現が試みられています。
大ポーランド地方
ポーランド有数の穀倉地帯である大ポーランド地方では、かつて美しい民族衣装が見られましたが、現在は地方合唱団などにわずかな痕跡を残すのみです。特に、ポスナン地方一帯で着用されたシャモトゥウィ衣装は、プロイセン領有時代の民族の象徴として祭礼で着用されています。男性は、花や鳥の羽を飾った黒いフェルト帽、赤いウールのジャケット、黒いウールの外套などを着用し、赤と黒のコントラストが特徴的です。女性は、白糸刺繍を施したチュール布のボンネット、ボディス、スカート、エプロンを着用し、清楚な印象です。既婚女性のボンネットは耳を覆うほど大きく、祭日には未婚女性は小ぶりのものを着用します。
クヤヴィ地方
ポーランドで最も早く開けた地域であるクヤヴィ地方は、農業が盛んでした。衣装は豪華で重厚です。農園主はシルクハットや飾りピンで飾り立て、若い男性はアストラカンの縁取りをした紺色の帽子を被りました。ケープ付きの毛皮のコートが好まれ、結婚式では袖なしの外套が着用されました。祭りの日には、金色のスパンコールで飾られたプリーツ付きの革ブーツを履きました。既婚女性は、白糸刺繍のボンネットに絹のスカーフを被り、フリルの襟のブラウス、刺繍入りのエプロン、緞子のスカートを着用しました。スカートの色は青、緑、深紅が好まれ、金糸で縁取られた毛皮のケープ付き上着は裕福な既婚女性に人気でした。未婚の女性は青系のボディスを着用し、冬にはトルコ模様のショールを羽織りました。祭日には、サンゴや琥珀のネックレスを何連も重ねていました。
シロンスク地方
山がちなシロンスク地方は、南東部が工業地帯です。
ロズバルクの衣装
上シレジアを代表する優美な衣装で、男性は白いシャツの上にウールの袖なし外套を着用します。女性はレースの縁取りの頭飾り、レース飾りのブラウス、金ボタン付きのボディス、花柄の刺繍エプロンなどを着用します。襞襟が特徴的です。
チェシンの衣装
額を覆うレースのボンネットの上にスカーフを被り、短いビロードのボディス、黒や深紅のスカートを着用します。シルクのエプロンに銀の飾りベルトが特徴です。
カルパティの衣装
山岳地帯では、羊飼いたちが黒いフェルト帽、白いウールの外套、刺繍入りのズボン、独特な革靴を着用していました。女性は黒いウールの巻きスカートとエプロンを着用していました。
ジヴィエツの衣装
既婚女性は宝石と金糸刺繍を施した被り物を被り、毛皮のケープと緞子のボディスを着用します。未婚、既婚問わず、刺繍入りのチュールのフリルブラウスと、緞子のスカートを着用します。
小ポーランド地方
古都クラクフを中心に発展した小ポーランド地方は、ポーランドの民族衣装を代表する地域です。
クラクフの衣装
男性は子ヒツジの毛皮で縁取った帽子「マギェルキ」を被り、ケープ付きの長い外套や、トルコ風の襟付き外套を着用しました。飾りボタンのついた膝丈ジャケットの上からベルトを締め、細い縞模様のズボンと革のブーツを履きました。女性は、スカーフを被り、膨らませたスカート、刺繍入りのエプロン、ビロードや緞子のボディスを着用します。未婚女性は、スパンコールや刺繍で華やかに飾り立てます。
ソンデンツキェの衣装
男性は、17世紀の貴族の乗馬服に似た刺繍入りの外套とズボンを着用し、先端が反り返ったブーツを履きます。女性は赤糸で刺繍したスカーフ、襞を畳んだジャケット、スカート、エプロンを着用します。
ルブリンの衣装
男性は子ヒツジ縁の帽子や麦わら帽子を被り、青いウールのジャケットとズボンを着用します。婚礼などでは刺繍入りのスクマナを着用し、赤いアップリケの付いたシャツやジャケットを着ます。女性はクラクフの衣装に準じます。
マゾフシェ地方
首都ワルシャワを抱えるマゾフシェ地方では、女子服の鮮やかな縞模様が有名です。
ウォヴィチの衣装
男性は銀の針金で飾った黒いフェルト帽を被り、無地のジャケットと縞模様のズボンを着用します。女性は刺繍のブラウス、刺繍やビーズで飾ったボディス、縞模様のエプロンを着用します。
これらの多様な民族衣装は、ポーランドの歴史、文化、そして地域ごとの独自性を豊かに表現しています。
(監修)石山彰『ポーランドの民族衣装』恒文社
(監修)丹野郁『世界の民族衣装の事典』東京堂出版 2006 ISBN 978-4490106688
各地方の民族衣装
ポメラニア地方
バルト海に面したポメラニア地方は、カシュプ人が多く居住し、漁業が盛んでした。漁師たちは、魚油や松脂を染み込ませた長靴と毛皮のフードを着用していました。女性は、亜麻のブラウスに青いウールのスカートという質素な服装でしたが、修道女から伝えられた金糸刺繍のビロードの頭飾りを身に着けていました。現在では、カシュプ刺繍以外はほとんど残っておらず、地方合唱団などでわずかに再現が試みられています。
大ポーランド地方
ポーランド有数の穀倉地帯である大ポーランド地方では、かつて美しい民族衣装が見られましたが、現在は地方合唱団などにわずかな痕跡を残すのみです。特に、ポスナン地方一帯で着用されたシャモトゥウィ衣装は、プロイセン領有時代の民族の象徴として祭礼で着用されています。男性は、花や鳥の羽を飾った黒いフェルト帽、赤いウールのジャケット、黒いウールの外套などを着用し、赤と黒のコントラストが特徴的です。女性は、白糸刺繍を施したチュール布のボンネット、ボディス、スカート、エプロンを着用し、清楚な印象です。既婚女性のボンネットは耳を覆うほど大きく、祭日には未婚女性は小ぶりのものを着用します。
クヤヴィ地方
ポーランドで最も早く開けた地域であるクヤヴィ地方は、農業が盛んでした。衣装は豪華で重厚です。農園主はシルクハットや飾りピンで飾り立て、若い男性はアストラカンの縁取りをした紺色の帽子を被りました。ケープ付きの毛皮のコートが好まれ、結婚式では袖なしの外套が着用されました。祭りの日には、金色のスパンコールで飾られたプリーツ付きの革ブーツを履きました。既婚女性は、白糸刺繍のボンネットに絹のスカーフを被り、フリルの襟のブラウス、刺繍入りのエプロン、緞子のスカートを着用しました。スカートの色は青、緑、深紅が好まれ、金糸で縁取られた毛皮のケープ付き上着は裕福な既婚女性に人気でした。未婚の女性は青系のボディスを着用し、冬にはトルコ模様のショールを羽織りました。祭日には、サンゴや琥珀のネックレスを何連も重ねていました。
シロンスク地方
山がちなシロンスク地方は、南東部が工業地帯です。
ロズバルクの衣装
上シレジアを代表する優美な衣装で、男性は白いシャツの上にウールの袖なし外套を着用します。女性はレースの縁取りの頭飾り、レース飾りのブラウス、金ボタン付きのボディス、花柄の刺繍エプロンなどを着用します。襞襟が特徴的です。
チェシンの衣装
額を覆うレースのボンネットの上にスカーフを被り、短いビロードのボディス、黒や深紅のスカートを着用します。シルクのエプロンに銀の飾りベルトが特徴です。
カルパティの衣装
山岳地帯では、羊飼いたちが黒いフェルト帽、白いウールの外套、刺繍入りのズボン、独特な革靴を着用していました。女性は黒いウールの巻きスカートとエプロンを着用していました。
ジヴィエツの衣装
既婚女性は宝石と金糸刺繍を施した被り物を被り、毛皮のケープと緞子のボディスを着用します。未婚、既婚問わず、刺繍入りのチュールのフリルブラウスと、緞子のスカートを着用します。
小ポーランド地方
古都クラクフを中心に発展した小ポーランド地方は、ポーランドの民族衣装を代表する地域です。
クラクフの衣装
男性は子ヒツジの毛皮で縁取った帽子「マギェルキ」を被り、ケープ付きの長い外套や、トルコ風の襟付き外套を着用しました。飾りボタンのついた膝丈ジャケットの上からベルトを締め、細い縞模様のズボンと革のブーツを履きました。女性は、スカーフを被り、膨らませたスカート、刺繍入りのエプロン、ビロードや緞子のボディスを着用します。未婚女性は、スパンコールや刺繍で華やかに飾り立てます。
ソンデンツキェの衣装
男性は、17世紀の貴族の乗馬服に似た刺繍入りの外套とズボンを着用し、先端が反り返ったブーツを履きます。女性は赤糸で刺繍したスカーフ、襞を畳んだジャケット、スカート、エプロンを着用します。
ルブリンの衣装
男性は子ヒツジ縁の帽子や麦わら帽子を被り、青いウールのジャケットとズボンを着用します。婚礼などでは刺繍入りのスクマナを着用し、赤いアップリケの付いたシャツやジャケットを着ます。女性はクラクフの衣装に準じます。
マゾフシェ地方
首都ワルシャワを抱えるマゾフシェ地方では、女子服の鮮やかな縞模様が有名です。
ウォヴィチの衣装
男性は銀の針金で飾った黒いフェルト帽を被り、無地のジャケットと縞模様のズボンを着用します。女性は刺繍のブラウス、刺繍やビーズで飾ったボディス、縞模様のエプロンを着用します。
これらの多様な民族衣装は、ポーランドの歴史、文化、そして地域ごとの独自性を豊かに表現しています。
参考資料
(監修)石山彰『ポーランドの民族衣装』恒文社
(監修)丹野郁『世界の民族衣装の事典』東京堂出版 2006 ISBN 978-4490106688
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