ポーランド回廊

ポーランド回廊の概要

ポーランド回廊（Polnischer Korridor）は、第一次世界大戦後にポーランドがドイツから割譲された領土の一部を指します。この地域はポーランド第二共和国の時代（1918年〜1939年）に、バルト海へのアクセスを確保するために重要な役割を果たしました。ポーランド回廊は、自由都市ダンツィヒ（現在のグダニスク）を東側に、ドイツ領プロイセンのポメラニア県を西側に並ぶ形で、バルト海に面した地帯です。

歴史的背景

ポーランド回廊の歴史は古く、9世紀頃からカシューブ人などの西スラブ系住民が定住していました。10世紀には、ポーランド王国のミェシュコ1世がこの地を征服し、以降はポメレリア公家による統治が続きました。13世紀にはブランデンブルク辺境伯が介入し、一時的にダンツィヒは彼らの支配下となります。その後、ポーランド王ヴワディスワフ1世は奪還を試みましたが、結果的にドイツ騎士団による占拠が行われました。

土壌の争いは続き、カリシュ条約によってドイツ騎士団の領有権が確定。1409年以降、ポーランドリトアニア連邦とドイツ騎士団の間で戦争が勃発し、1466年のトールン和約によってポメレリアはポーランド王に戻りました。この地域は自治領として扱われ、グダニスクを含む多様な民族と文化が共存していました。

近代史とポーランド回廊の成立

1772年のポーランド第一次分割では、ポメレリアはプロイセン王国に併合され、以降はドイツ化政策が進行しました。第一次世界大戦後、多国籍の連合国はポーランドの復興に向けた新たな境界線を引くことになりました。ウッドロウ・ウィルソン大統領が提唱した十四か条の原則に基づき、ポーランドにはバルト海への出口が与えられ、その一部としてポーランド回廊が設置されました。この結果、ドイツはヴェルサイユ条約で回廊の成立を認めざるを得ませんでした。

そのため、ダンツィヒは国際連盟の統治下に置かれ、ポーランドとドイツの対立が深刻化しました。ポーランド政府は、ポーランド回廊沿いに新たな港町グディニャを開発し、ダンツィヒに対抗する力をもつ港を築くことに成功しました。

文化と住民

ポーランド回廊の住民構成は多様で、ポーゼン地域のドイツ人と、カシューブ人やポーランド人といったスラブ系住民が共存していました。1910年の統計によると、この地域には421,029人のドイツ人が居住し、全体の42.5%を占めていました。そのため、ポーランド回廊は多文化共生の地域でありながら、歴史的にドイツ人の影響が強かった地点でもあります。

しかし、ポーランド回廊の設立によりドイツの領土は分断され、彼らの居住を望むものは少なくなりました。第二次世界大戦後、西プロイセンはポーランド領となり、ポーランドの海岸線は大きく広がりました。また、ポーランド・ソビエト戦争の際には、この地域でのドイツ人追放が行われました。これにより、ポーランド回廊は歴史的、文化的に重要な意味を持つ地帯として認識されることとなりました。

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