ポール・ウォルフォウィッツ

ポール・ダンデス・ウォルフォウィッツ：ネオコンの論客と波乱万丈の経歴

ポール・ダンデス・ウォルフォウィッツ（1943年生まれ）は、アメリカ合衆国の政治学者、外交官であり、20世紀後半から21世紀にかけてアメリカ外交に多大な影響を与えた人物です。ネオコン保守主義の代表的な論客として知られ、イラク戦争や中東政策において中心的役割を果たした一方で、世界銀行総裁在任中のスキャンダルなど、数々の論争も巻き起こしました。彼の経歴と思想を詳細に見ていきましょう。

ユダヤ系移民の家庭とイスラエルでの経験

ウォルフォウィッツは、ポーランドからの移民である数学者ジェイコブ・ウォルフォウィッツとリリアン・ダンデスの息子としてニューヨークで生まれました。彼の父はホロコーストの経験からシオニズムに傾倒しており、その影響はウォルフォウィッツの思想形成に深く関わっています。14歳の時に父と共にイスラエルに移住し、イスラエル工科大学で過ごした経験も彼の人生に大きな影響を与えたと考えられます。

学者から外交官へ

コーネル大学で数学を専攻した後、政治学に転身。シカゴ大学でレオ・シュトラウスに師事し、政治学博士号を取得しました。その後、イェール大学で教鞭をとる傍ら、国務省や国防総省で勤務。レーガン政権下では国務次官補（東アジア・太平洋担当）を務め、インドネシア大使も経験しました。インドネシアでは、スハルト政権を批判するなど、複雑な政治状況の中で独自の外交手腕を発揮しました。

ネオコンの中心人物として

ウォルフォウィッツは、冷戦時代にはタカ派グループ「チームB」の一員として活動。共和党政権下では、国防総省の要職を歴任しました。ジョージ・W・ブッシュ政権下では、国防副長官として、ドナルド・ラムズフェルド国防長官と共にイラク戦争への道を切り開いた中心人物の一人です。イラク戦争後の復興費用に関する楽観的な見解は、後に厳しい批判を浴びる事になります。アメリカ新世紀プロジェクトにも参加し、ブッシュ政権におけるネオコン陣営の要石となりました。

世界銀行総裁とスキャンダル

2005年、ブッシュ大統領により世界銀行総裁に指名され就任。腐敗対策を重視した政策を推進しましたが、世界銀行職員との不適切な関係が露呈し、大きなスキャンダルに発展。内部告発によって、恋人のシャーハー・リザーへの優遇措置が明るみに出ると、激しい批判を浴び、2007年に辞任に追い込まれました。

その後の活動と対中強硬姿勢

世界銀行総裁辞任後も、ブッシュ政権で国際安全保障諮問委員会の委員長を務めるなど、政府機関に深く関与し続けました。2016年のアメリカ大統領選挙ではクリントンを支持。近年は、中国のハイテク覇権、知的財産権侵害、ウイグル人に対する弾圧を強く批判しており、対中強硬姿勢を鮮明にしています。世界銀行の対中融資についても、批判的な立場をとっています。

まとめ

ポール・ダンデス・ウォルフォウィッツは、アメリカ外交に大きな影響を与えた人物です。学究的なバックグラウンドを持ちながら、外交官、政治家として活躍し、ネオコンの中心人物としてイラク戦争など重要な政策決定に関わりました。一方で、世界銀行総裁在任中のスキャンダルや、近年における対中強硬姿勢など、彼の経歴には多くの論争と複雑な側面が存在します。彼の行動と思想は、国際政治を理解する上で重要な要素となっています。

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