ポール・サバティエ

ポール・サバティエについて

ポール・サバティエ（Paul Sabatier）は、1854年11月5日にフランスのカルカソンヌで生まれ、1941年8月14日にトゥールーズで亡くなった著名な化学者です。1877年に高等師範学校を卒業後、1880年からコレージュ・ド・フランスに移り、以来化学の研究を重ねました。彼の研究は多岐にわたり、特に硫黄や金属硫酸塩に関する熱化学が彼の博士号取得の基盤となりました。

その後、トゥールーズに移ったサバティエは、硫化物や塩化物、さらにはクロム酸塩や銅化合物に関する研究に専念しました。また、窒素酸化物やニトロソジスルホン酸、その塩の研究を通じて分配係数や吸収スペクトルに関する重要な基礎研究を行いました。

サバティエの業績の中でも特に際立っているのは、水素化の工業的利用を容易にした点です。1897年にはアメリカの化学者ジェームズ・ボイスが提唱した生化学の知見を元に、微量のニッケル触媒を用いてアルケンなどの炭素化合物に水素を付加する方法を発見しました。この発見により、魚油を固形の硬化油にするプロセスが実現可能になりました。

1905年にはトゥールーズ大学理学部の学部長となり、化学の教授として多くの学生に教えました。サバティエの名が広く知られるのは、二酸化炭素と水素を反応させてメタンを生成する「サバティエ反応」によるものであり、彼の著作『La Catalyse en Chimie Organique』（1913年）でもその理論について詳述されています。

彼はまた、微細な金属粒子を利用した有機化合物の水素化法を確立したことにより、1912年にはヴィクトル・グリニャールと共にノーベル化学賞を受賞しました。さらには、1918年には王立協会の外国人会員に選ばれ、1926年にはアルバート・メダルを受賞するなど、彼の業績は高く評価されています。

サバティエは生涯に4度結婚しており、トゥールーズにて最後の時を迎えました。また、彼の名前を冠したトゥールーズ第三大学が存在し、この大学は彼の業績を称えています。さらに、彼は数学者トーマス・スティルチェスと共に「Annales de la Faculté des Sciences de Toulouse」という学術誌を創刊しました。

弟子の中には、久保田勉之助（1885年–1961年）などがいます。彼の研究と業績は今なお化学の分野で重要な影響を持ち続けています。彼の貢献によって、触媒化学の理解が進み、今の化学および産業における水素の利用方法に大きな変革をもたらしました。

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