ポール・シーモア

ポール・シーモア：NBA黎明期を支えた立役者

ポール・シーモア（Paul Seymour, 1928年1月30日 - 1998年5月5日）は、NBAの初期を彩ったバスケットボール選手であり、引退後は指導者としてもその才能を発揮しました。オハイオ州トレド出身で、トレド大学でバスケットボールの腕を磨いた彼は、キャリアの大半をシラキュース・ナショナルズ（後のフィラデルフィア・76ers）で過ごし、1955年のNBA制覇に大きく貢献しました。

選手としての軌跡

1947年、シーモアはBAA（NBAの前身）のボルティモア・ブレッツに入団しプロのキャリアをスタートさせました。しかし、22試合に出場後、兵役のためにチームを離れることになります。この年、ブレッツは初代NBAチャンピオンに輝きましたが、シーモアは惜しくもその栄光を分かち合うことはできませんでした。

1949年にシラキュース・ナショナルズへ移籍。当初はチームの脇役でしたが、1951-52シーズンから著しい成長を見せ、1952-53シーズンには平均14.2得点を記録するまでに成長しました。この年のプレーオフ、ボストン・セルティックスとの1回戦では、第2戦がトリプルオーバータイムにもつれる激戦となり、シーモアはチームメイトのレッド・ロッチャと共に67分間プレイするという記録を打ち立てました。

ドルフ・シェイズを中心とするナショナルズは、当時のNBAを代表する強豪チームであり、1955年にはファイナルでミネアポリス・レイカーズを破り、見事優勝を果たしました。このシリーズの第2戦、シーモアは試合終了間際にハーフライン手前から決勝シュートを決め、チームを勝利に導きました。この劇的な瞬間は、「プレーオフ・偉大な60の瞬間」の候補にも選ばれています。

1956-57シーズンからは、現役選手とヘッドコーチを兼任するようになりました。優勝後、チームは中堅に落ち着いていましたが、シーモアがコーチに就任して4シーズン目の1959-60シーズンには、45勝30敗という好成績を記録しました。しかし、このシーズンを最後に、シーモアは11シーズンを過ごしたナショナルズを去り、現役を引退しました。BAA/NBA通算成績は、12シーズン622試合出場、5,836得点、2,341アシスト、平均9.4得点、3.8アシストでした。

指導者としての挑戦

ナショナルズ退団後は、セントルイス・ホークス、ボルティモア・ブレッツ、デトロイト・ピストンズでヘッドコーチを歴任しました。コーチとしての通算成績は、512試合271勝241敗、勝率.529、プレーオフ進出6回。シーモアは、当時NBAで台頭してきたアフリカ系アメリカ人選手の擁護者として知られていました。

1960-61シーズン、ホークスのヘッドコーチに就任したシーモアですが、チームの主力選手であるボブ・ペティットとクリフ・ヘイガンが、アフリカ系アメリカ人のクレオ・ヒルがシュートを打ち過ぎると球団フロントに不満を訴えるという事件が起こりました。彼らの不満の背景には、人種差別意識があったとも言われています。フロントは彼らの要求を受け入れ、シーモアにヒルの起用を控えるように指示しましたが、シーモアはこれを拒否。その結果、シーモアは新シーズンわずか14試合で解任されるという不遇をかこつことになりました。

ポール・シーモアは、選手としてだけでなく、指導者としてもNBAの歴史に名を刻んだ人物です。彼の選手としての功績、指導者としての信念は、多くの人々に感銘を与え続けています。

参考資料

選手成績
コーチ成績
* The 60 Greatest Playoff Moments

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