ポール・スカロン

ポール・スカロン（Paul Scarron）：17世紀フランスの喜劇作家

ポール・スカロンは、1610年7月10日にパリで誕生し、1660年に亡くなったフランスの劇作家です。その作品群に共通するテーマは「見た目と実情のギャップ」であり、これはフランス喜劇に大きな影響を与えました。特にモリエールの作品と多くの類似点を見出すことができます。

生涯の流れ

スカロンは1590年代から名を馳せたスカロン家に生まれ育ちました。父は法曹界に関与しており、高等法院の評議官でした。母は彼が3歳の時に亡くなり、父はその後、異母兄弟たちを伴って再婚しましたが、家族内での関係は緊張を伴うものでした。1629年に彼は家庭を離れ、自由な生活を楽しむようになりました。この時期、トリスタン・レルミットやジョルジュ・ド・スキュデリーといった文人たちと交流し、パリの社交界での生活を経験しました。

1635年、スカロンはパリを離れ、ル・マンの司教のもとで新しい生活を始めます。そこでも様々な芸術家や劇作家と交流を持ちましたが、1638年にはリューマチを患い、その影響で身体に大きな変化を引き起こされました。これ以降、彼は自己の病と闘う人生を歩むことになります。

1640年頃、再びパリに戻ったスカロンは、王妃から年金を受け取ることになり、「王妃の病人」としても知られるようになりました。この時期は彼にとって文芸活動の本格的なスタートとなり、1643年には詩集『ビュルレスク詩集』を発表し、一躍脚光を浴びることになります。その後、喜劇作品に転向し、特に『ジョドレ、あるいは主人になった召使』が大ヒットを記録し、彼は劇作家としても名を馳せます。

1648年には戯曲『偽ヴェルギリウス』を発表し、この年から次々と作品を発表する充実した創作活動を行いました。しかし、政治的な事情や健康問題が重なり、年金が停止されるなどの困難に直面しました。この状況からスカロンは、1660年に亡くなるまで多くの作品を残し続けました。特に「ロマン・コミック」は彼の代表作として知られています。

代表作品とテーマ

スカロンの作品には、見た目や役柄が実際とは異なることが常に意識された「見た目と実情のギャップ」が魅力です。たとえば『ジョドレ、あるいは主人になった召使』では、召使であるジョドレが中心に据えられ、貴族との名誉や恋愛を巡る物語の中で、独自の喜劇作品に仕上げています。この手法は、後の作品にも繰り返し登場し、観客にとって新たな視点をもたらしました。

『滑稽な相続人』では、主人公としての召使が活躍し、その物語は勧善懲悪のテーマを持っています。スカロンの劇作品は次第に多様化し、様々なテーマを扱っていくことになりますが、彼の根底に流れる思想は常に観客を楽しませることにありました。

晩年と死後の影響

スカロンは1660年、リューマチによる痛みに耐えながら自宅で亡くなりますが、死後も彼の未発表作品が次々と世に出され、それが彼の家族を経済的に支えることになります。彼の作品は、後の喜劇作家たちにも大きな影響を与え、特にモリエールの作品にその影響が色濃く現れています。彼の独特の視点とユーモアは、今なお多くの人々に愛され続けています。

結論

ポール・スカロンは、17世紀のフランス文学において重要な役割を果たした劇作家であり、彼の作品に見られるテーマや構造は、フランスの喜劇の発展に寄与し続けています。

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