ポール・トゥヴィエ

ポール・トゥヴィエ（1915年4月3日-1996年7月17日）は、第二次世界大戦下のフランスにおいて、ナチス協力者として暗躍した人物である。彼は、ユダヤ人やレジスタンス運動員への残虐な弾圧行為に関与し、「リヨンの処刑人」という不名誉な称号で知られるようになった。

トゥヴィエはアルプ＝ド＝オート＝プロヴァンス県サン＝ヴァンサン＝シュル＝ジャブロンに生まれた。第二次世界大戦勃発後、彼はヴィシー政権を支持し、民兵団に加わった。この民兵団は、ドイツ占領下のフランスにおいて、ユダヤ人やレジスタンス運動員に対する弾圧を強化する役割を果たしていた。トゥヴィエは、この民兵団の一員として、数多くの残虐行為に関与したとされている。

戦後、トゥヴィエは人道に対する罪で起訴され、欠席裁判で死刑判決を受けた。しかし、彼は判決を逃れるため、巧妙に逃亡生活を送った。さらに、自身の死亡を偽装するために新聞に死亡広告を出稿するなど、執拗な逃亡劇を展開した。

フランス捜査当局は、トゥヴィエの逮捕に執念を燃やし、長年にわたる捜査を続けた。捜査当局は、トゥヴィエがカトリック関連施設に潜伏している可能性が高いと早くから睨んでいた。1971年には、リヨン大司教からの圧力を受けた当時のジョルジュ・ポンピドゥー大統領が恩赦を出すことを検討したが、国民の強い反発を受け、恩赦は実現しなかった。

その後、地道な捜査が続けられ、住民運動の支援も得て、トゥヴィエがカトリックの極右組織聖ピオ十世会の「ノートルダムの騎士団」に所属していることが判明した。1985年、捜査員は、カトリック教会リヨン大司教区内の修道院に潜入捜査を行い、ニースの修道院でついにトゥヴィエを逮捕した。逮捕時、彼は長年逃亡生活を送っていたにもかかわらず、平然と修道院で生活していたという。

1994年、トゥヴィエは人道に対する罪で無期懲役の判決が確定した。そして、1996年、フレンヌ刑務所で獄中死した。彼の死は、第二次世界大戦中のフランスにおけるナチス協力者の責任と、歴史的真実解明への道のりを象徴する出来事であった。トゥヴィエの生涯は、戦争と平和、正義と許しといった、現代社会においてもなお重要なテーマを私たちに突きつけてくる。

トゥヴィエの残虐行為は、モーリス・パポンやマルセル・ルフェーブルといった他のナチス協力者と並んで、フランスの歴史における暗い一章として記憶されている。彼らの罪行は、私たちに二度とこのような悲劇を繰り返してはならないという、重要な教訓を与えてくれる。

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