ポール・フレール

ポール・フレール：ドライバーからジャーナリストへ、そしてモータースポーツ界のレジェンド

ポール・フレール(1917年1月30日 - 2008年2月23日)は、フランス生まれのベルギー人ドライバーにして、世界的に著名な自動車ジャーナリストです。ブリュッセルの大学で経営工学を修めた後、1945年からジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせました。しかし、彼の名はモータースポーツの世界で最も広く知られています。

華麗なるレーシングキャリア

1946年に二輪レースからキャリアをスタートさせたフレールは、すぐに自動車レースへと転向します。1948年のスパ・フランコルシャン24時間レースが本格的なレースデビューとなりました。その後、1960年までの約12年間、彼は数々のレースで活躍します。なかでも注目すべきは、ル・マン24時間レースでの活躍です。1953年から1960年まで毎年出場し、様々なマシンを駆り、1953年にはポルシェ550クーペで1500ccクラス優勝を、1955年にはアストンマーティンDB3Sで総合2位、そして1960年にはフェラーリ250TRで念願の総合優勝を成し遂げました。この勝利を機に、彼は現役レーサーを引退します。

F1にも1952年から1956年にかけて参戦し、1956年のベルギーグランプリでは2位を獲得しています。また、ミッレミリアにも出場しており、1953年にはクライスラー・サラトガという、当時としては異例の車種で2リットル以上の生産者部門で優勝するという快挙も達成しました。フレールのレースキャリアは、技術力と大胆な戦略、そして類まれなドライビングテクニックによって彩られていました。彼のドライビングスタイルは、後世のドライバーたちに多大な影響を与えました。

ジャーナリストとしての活躍と日本のモータースポーツ界への貢献

現役引退後はジャーナリストとしての活動を本格化させます。ヨーロッパを拠点に活躍し、『Road & Track』誌のヨーロッパ版エディターを務めるなど、国際的な舞台で活躍しました。一方、日本との関わりも深く、日本の自動車雑誌『カーグラフィック』では「FROM EUROPE」のコラムを担当し、親しみを込めて「PF先生」と呼ばれていました。初代編集長である小林彰太郎氏とは深い親交があり、日本のモータージャーナリズムの発展に貢献しました。

数々の著書も出版しており、代表作である「ハイスピード・ドライビング」では、自身の豊富な経験に基づいたドライビングテクニックを理論的に解説し、多くのモータースポーツ愛好家から支持されました。また、鈴鹿サーキットでレーシングスクールを開設し、後進の育成にも力を注ぎました。

マツダ、ホンダとの関わり

さらに、フレールは自動車メーカーとの深い繋がりも持っていました。1976年からマツダの車両設計コンサルタントとして招聘され、初代323から三代目RX-7まで、走行評価や貴重なアドバイスを提供しました。また、ホンダの技術者とも親交があり、ホンダCR-X 1.6SiRを愛車として長く愛用したエピソードも知られています。1980年代前半には、横浜タイヤ「アスペック」のCMにも出演しました。

晩年と功績

2007年、90歳の誕生日の直前に交通事故に遭い、重傷を負いますが、彼のモータースポーツへの情熱は最後まで衰えることはありませんでした。2008年2月23日、ブリュッセルで91歳で亡くなりました。彼の功績を称え、スパ・フランコルシャンサーキットのスタブロ・コーナーは「ポール・フレール・コーナー」と改名され、記念碑が建立されました。

ポール・フレールは、ドライバー、ジャーナリスト、そしてコンサルタントとして、モータースポーツ界に計り知れない貢献をしました。彼の功績は、これからも長く語り継がれていくでしょう。

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