マイク・ダントーニ

マイク・ダントーニ：ラン＆ガンを体現した名将の軌跡

マイク・ダントーニ（Mike D'Antoni）は、1951年生まれのアメリカ合衆国出身のバスケットボール指導者です。NBAの複数のチームでヘッドコーチを歴任し、2020-21シーズンからはブルックリン・ネッツでアシスタントコーチを務めました。選手時代はNBAだけでなく、イタリアでも活躍し、アメリカとイタリアの国籍を持っています。特に、イタリア仕込みの「ラン＆ガン」オフェンスの指導者として知られています。

選手時代：イタリアでの開花

ポイントガードとしてカンザス大学からNBA入りを果たしますが、NBAでは目立った活躍はできませんでした。しかし、1978年にイタリアに渡り、オリンピア・ミラノで13年間プレーしたことが、彼のバスケットボール人生を大きく変えました。

オリンピア・ミラノでは、持ち前の才能が開花し、チームをイタリアリーグ優勝5回、イタリアカップ優勝2回、欧州チャンピオンズカップ（現ユーロリーグ）優勝2回など、数々のタイトルに導きました。455試合出場、5573得点、1140アシストはいずれもオリンピア・ミラノのチーム記録です。

イタリア国籍も取得し、イタリア代表として欧州選手権にも出場。スティールが得意だったことから、地元ファンからは「アルセーヌ・ルパン」の愛称で親しまれました。当時イタリアに住んでいたコービー・ブライアントもダントーニに憧れた一人です。1990年にはリーグ史上最高のポイントガードに選ばれ、2008年には「ユーロリーグ史上の偉大な50人の貢献者」にも選出されています。

ヘッドコーチとしてのキャリア

イタリアでの成功

1990年に現役引退後、そのままオリンピア・ミラノのヘッドコーチに就任。1993年にはKorac Cupで優勝を果たします。その後、パッラカネストロ・トレヴィーゾのコーチに転身し、1997年にはイタリアリーグ優勝を達成。イタリアリーグでは、2度の最優秀コーチ賞を受賞するなど、確固たる地位を築きました。

NBAへの挑戦と「ラン＆ガン」旋風

イタリアでの成功を引っ提げ、1998年にデンバー・ナゲッツのヘッドコーチとしてNBAに凱旋。しかし、短縮シーズンとなった1998-99シーズンは14勝36敗と振るわず、1シーズンで解任されます。その後、サンアントニオ・スパーズのスカウト、ポートランド・トレイルブレイザーズのアシスタントコーチを経て、再びイタリアへ。

2001-02シーズンには、パッラカネストロ・トレヴィーゾを再びリーグ優勝に導き、2002年からはフェニックス・サンズのアシスタントコーチに就任します。

サンズでは、2003-04シーズン途中にヘッドコーチに昇格。スティーブ・ナッシュを獲得し、アマーレ・スタウダマイアー、ショーン・マリオンらを擁したチームで、イタリア仕込みの「ラン＆ガン」オフェンスを展開し、リーグに旋風を巻き起こしました。

2004-05シーズンには、サンズを62勝20敗という驚異的な成績に導き、ナッシュをMVPに、自身も最優秀コーチ賞に輝きました。しかし、プレーオフではサンアントニオ・スパーズに敗れ、「ラン＆ガンではプレーオフを勝ち抜けない」という批判も受けました。

その後も、チームはリーグトップクラスの成績を収めますが、プレーオフではなかなか結果を残せず、2007-08シーズン終了後にサンズを去ることになりました。

その後のキャリア

サンズ退団後は、ニューヨーク・ニックス、ロサンゼルス・レイカーズでヘッドコーチを務めましたが、目立った成績は残せませんでした。その後、ヒューストン・ロケッツのヘッドコーチに就任し、2016-17シーズンには2度目の最優秀コーチ賞を受賞。2020年9月に退任し、2020-21シーズンからはブルックリン・ネッツのアシスタントコーチを務めています。

指導方針：攻撃は最大の防御

ダントーニの指導方針は、何と言っても「ラン＆ガン」オフェンスです。ボールを保持してから7秒以内にシュートを打つことを目標とし、スリーポイントシュートなどのロングシュートを多用します。彼のオフェンス重視の姿勢は、選手たちに好意的に受け入れられており、走れる選手を中心としたスモールラインアップを採用することも特徴です。

一方で、ディフェンスは二の次という考え方には、「プレーオフでは勝ち抜けない」という批判も根強くあります。しかし、ダントーニは自身の哲学を貫き、攻撃的なバスケットボールを追求し続けています。

マイク・ダントーニは、その革新的な戦術と情熱的な指導で、バスケットボール界に大きな影響を与えた名将と言えるでしょう。

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